旧夢 | ナノ

▼仗助:予測手帳

「オースナマエ!」
教室の隅で手帳を弄っているナマエに声をかけた。
クラスは違うけど毎朝の習慣にすりゃ変でもない。
こうやって毎日声をかけてやっと友達の距離になれた。
これからもちょっとずつ距離を詰めていくつもりだ。そして行く行くは。

「おはよう」
水色のボールペンで日付に★を書きながら、俺を見ることもなく返事をするナマエ。
前の席を借りてナマエの手帳を覗き込むと来月のカレンダーにいくつか描いてあった。
「それ何の日だ?」
「欲しい物の発売日。来月はラッシュだから忘れないように書いておこうと思って。」
「ふーん。」
俺は一番最初のマークを指差した。
「この日は何が出るんだ?」
「え、えーとなんだっけな。」
「覚えてねェんじゃねッスか」
「覚えてるよ!あー…なんかどうでもいいやつな気がしてきた。やっぱ買わない」
「散財が防げて便利ってやつかよ」
「そうかも。」
途端に手帳に興味を無くすナマエ。筆記用具を散らかしたまま手帳をしまう。
鞄に突っ込んだところで「あ」と言ってもう一度手帳を広げた。
今日は赤い〇の日だった。
「仗助今日暇?」

「当然!」
思わぬナマエからの誘いに俺は立ち上がる勢いだった。
ナマエは面白かったのかヘラッと笑う。
「なにそれいつも暇なの?」
「いや。まぁ…そういうわけでもねーッスけど」
「じゃあさー今日買い物行こうよ。カメユーに」
「いいぜ。」
ナマエは〇の中に、同じ色のボールペンで〇を書き足した。

「それ何の日なんだ?」
「これはねー…知りたい?」
勿体ぶって俺の顔を覗きこむナマエ。
「其処まで言われたら気になるってもんだろー?」
と言い返す。

「じゃあ教えてあげよう」
ナマエはボールペンでその日の枠に何か書き始めた。


ガラッ
   と教室のドアが開く。
「おい東方!お前の教室は隣だぞ!!」
このクラスの担任が俺を目ざとく見つけて追い払いにかかる。
んだよったく今いいトコなのに。と思いながらも仕方なく立ち上がった。
「へへ、残念だったね仗助。続きは放課後に。」
と小さく手を振るナマエの手元を見て俺は飛び上がって喜びたい気持ちになった。

丸みのある文字で『デート仗』と書かれていたのを見つけたからだ。


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