今日もかっちりとした綺麗な制服を身にまとった美しい後ろ姿。
休み時間の開始直後、私は古橋くんとの関係を少しでも近づけようと、お礼作戦を決行しようとしていた。
彼のお昼はいつもバスケ部の部室と決まっていた、しかしそこにはバスケ部のレギュラーさん達がいる、そして古橋くんは予鈴がなるまで部室から出てこない、つまり話しかけるタイミングはそこまで移動するほんの数分だけだ。

勇気を振り絞ってその背中に声をかける。

「あっあ、あ、あのっ古橋くんっ」
「どうした」

緊張して声がどもってしまうけど、古橋くんはいつも通りのポーカーフェイスで振り向いてくれた。

「急にごめんね、その、こないだのお礼がしたくって」
「この間……あぁ、買い物か、気にしなくていいのに」
「そんなわけにいかないよ、すっごく助かったもん!!」

なんとしてでも古橋くんとお近付きになりたい私は必死に言った。
それは廊下にいたほかの生徒がしん、と黙るくらいに大きな声が出る程に。


「…驚いたな」
「へ?」
「いや、なんでもない、それでお礼とは何をしてくれるのだろう」

古橋くんは顎に手を当てて目線を何処かへ泳がせ何かを思案する仕草をとったけれどすぐ私の方へと目線を戻して言った、どうやらお礼は受け取ってくれるようで安心した。

「えーっと…一緒にご飯とかどうかな?」

古橋くんの目が大きく開いた気がした。
再び顎に手を添えて今度は私をじっとみた……照れる。

「……成程、それは助かる長谷川は料理がうまそうだもんな、是非頂くとしよう」

ん、んん?あれ、またなんか勘違いしてらっしゃる!?
私が言ったのは外食であって、古橋くんが言ってるのは私の手作りご飯……、つまり家にくるの!?

「え、えっと古橋くん?」
「あぁ、すまない実は部室から長谷川がいつも弁当を食べている中庭が見えるんだ、いつもお弁当なのだろう?だから料理がうまいのかと思ったんだ」

なんの勘違いなのか弁解をされたのだけど思考回路がショート寸前で私の頭はとうに深く考えることを諦めていた。

「い、いつにする?」
「明日だと助かる、部活が早く切り上がるんだ、帰るまでに時間があるしそうしてくれると」
「うん、明日だね……おっけー」
「あぁ、楽しみにしてるじゃあ明日な」
「お昼前にごめんね、また明日ぁー……」

古橋くんにしばらく手を振った私は興奮さめやらぬまま全力で自分の教室へと戻った。

「一葉ーどうだった?」
「あした、うちに、古橋くん、くる」

優希が目をに開いてキョトンとしていた。

「あんた、また変なこと」
「言ってないっ」
「………ん、まぁ……よかったじゃない、あんた料理上手なんだし」
「き、嫌いなものないか聞いておけばよかった」

私は肩をがくりと落として項垂れたのだった。



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