「はぁ……」

思わず溢れるため息、目線の先の彼は今日もカッコイイ。
横で親友の優希が「気持ち悪っ」と寒いぼを立てていたけどそんなこと気にもならない、恋は盲目、彼しか見えない。え、そういう使い方じゃない?良いところしか見えなくなる事の例え?どっちでも正解だからよし!

「あっ……」

それは見事に無駄な所作なく立ち上がる彼、背筋もピンと張っていて元より高い背丈が更に美しく伸びる。
「見すぎ……」と親友の優希が私を小突いたけどそれを怒る気にもならない程今の私は幸せである、クラスの違う彼と同じ空間で過ごせるのはこの月一で行われる委員会議だけだ……

「さいっ……こう!!ビバ美化委員!!」
「ねぇ」
「ん?」
「教室に残ってんのもう私らだけだけど……」

通りで私の声が響くわけだ、見渡すと委員会が終わったのか私と優希以外は誰もいない。

「いつのまに……」
「いやアンタ、アイツが立って教室から出てくの眺めてたじゃん…なんでそん時気づかないの…」
「いや、だって余りにもかっこよくて…見とれてたらそれ以外のこと見えなくなっちゃって」

そう、仕方ないのよだって女の子だもん。

「そんなに好きなら告白しちゃいなよ、もう…」
「えぇっ、無理無理!だってちゃんと話したことも無いんだよ!?一目惚れでした、とかずっと見てましたとか気持ち悪いじゃんそこはお友達から始めないと」
「急に現実的になったなおい…ていうかならさっさとお友達から初めて来いっつーの!」
「やだ……恥ずかしくて話しかけられないっ」
「ねぇひっぱたいていい?」

優希は顔をひくつかせて私を見据えた、そういいつつ手はあげないのわかってるもん、優希優しい!

「でもホント見てるだけでいいってこと無いでしょ」
「うん、一応ちゃんと付き合いたいなって気持ちとかはあるんだよ、でもやっぱり一歩が踏み出せないと言うか」

仮に一歩が踏み出せたとして告白出来るかと言われたら正直出来ないと思う。見てるだけでドキドキして顔が熱くなるのに目の前にしたら絶対、言葉なんて出ないよ。

「きっかけ作りにはいいと思うけどな、告白」

優希がぼそっと呟いた、私達以外は誰もいない教室にしんと溶けていく言葉。

「どういうこと?」
「そもそも告白してそれで全部おしまいっておかしいと思わない?一葉みたいにさ同級生くらいの立場ならいっそ告白くらいのインパクトで認識してもらった方が今後も優位に立てると思うのよ」
「詳しくっ」

優希の考えによると好意があることを伝えた上で仲良くした方が相手も意識しやすいのではないかとのこと、今みたいにこそこそしてたりすれば認識され無いどころかストーカー扱いかもしれない…

「確かに……で、でもなんて言ったら…」
「そりゃ、あんた好きになった経緯とかあるんでしょ、そういうの伝えて好きだから仲良くさせて下さい、とかでいいじゃん」
「な、成程……優希、わたし……行ってくる!!」
「今からかよ!」

私は委員会議のあった教室から駆け出して彼の教室へと向かう、確か今日は部活が無くって直ぐ家に帰るはず、早くしなきゃ間に合わない。

今いくぞぉーまってろ古橋くん!!



「勢い良く行ったけど大丈夫か一葉……」



ガラガラとゆっくり扉をあける、日が傾いたオレンジ色の教室にたった一人だけカバンに教科書を詰める姿があった。
よかった間に合った、古橋くんが居る。
扉の開いた音に特に反応を見せず物静かでクールな所も……カッコイイ……。

じゃなくて!!

「古橋くん!!」
「……」

ゆっくりと彼と目が合った、吸い込まれそうな真っ黒な瞳に目を奪われて体が硬直する。
えぇと、なんだっけ…好意を伝えて……あれ、お友達からだっけ……えっと、なんだったっけ……告白?あ、だめだなにか言わなきゃ。

「……どうした、なにか用事か?」
「え、えっと……あのっ……わた、し」

古橋くんが体ごとこちらを向いて小さくなる私の声を聞き逃さないようにと少し体を傾けてくれる、距離が、近い。

「………すまない、よく聞こえない、もう少し大きな声で……」
「あっあっ……」


真っ白。


「付き合ってくだしゃい!!」

優希、私ダメだったみたいです。



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