品行方正、誰からも頼られてそれが誇らしかったのは中学校までだった。 いつしか重くのしかかって、そうしなきゃいけないって使命感で息苦しくって、ホントはね、本音はね、たまにはやんちゃだってしてみたくなるの。 出来ないのは自分の弱さ。 「あー!」 高校の帰り道夕暮れ時、公園の前を通ったら子供の声、残念そうに聞こえてふと気になって子供達の見ている先を辿ると見事に木の枝に挟まってしまったサッカーボール。 おろおろとその場で困った顔をしている子達を見て私は公園の中へ歩き出した、私なら少し登れば届く距離だ、木登りなんてした事ないけど、でもやってみたい。 危ないからしなかった木登り、今は子供達しか見てないし…大丈夫。 まるでヒーローみたいだってワクワクしながら。 「ボール、とってあげるね」 「えっ、いいの!?」 子供達の弾む声に俄然やる気が出てきた、ブレザーを脱いで、シャツは腕巻くりして体操着をスカートの下に履いて木の幹に足をかける。 運動は出来るほうだ、それも成績のために頑張っただけだけど、こんなとこで役に立つなんて。 下から聞こえる可愛らしい声援に励まされ私は自分でも驚くくらいスイスイと木を登ってあっという間にサッカーボールをとってあげれた。 子供達はお礼を言って日暮れの為かすぐ帰った、木の上で満足げにしていた私はふと降りようとして顔を引きつらせた。 「た、たかい…」 そう、降りられなくなってしまったのだ、木の枝に跨ったまま私は狼狽えた、どうしよう降りられない。 そんな時、下から声が聞こえた。 「おーい大丈夫か?」 見覚えのある制服、同じ高校の人、何回か見たことある、ていうか同じクラスの。 「山崎、くん」 「おう、白石お前何してんのそんなとこで!」 見られてしまった羞恥心もあるけどそんなことより助けて欲しくて。 かくかく云々よろしく説明すれば豪快に笑い出す山崎くん。 「わ、笑わないでよ…」 「お前、こんな事しなさそうなのに優しいんだな、ほら」 笑いながらも手を伸ばしてくれる山崎くん、「鍛えてるから大丈夫」なんて受け止めてくれるようだ。 お言葉に甘えて手を伸ばしてその大きな手を握る。 「きゃっ」 「よっと…」 握った瞬間引き寄せられて思いっきり下へずれ落ちる、そんな私をしっかりと抱きとめてくれた山崎くん。 突然の浮遊感に驚いた。 「なっなんで引き摺り降ろすのっ」 「自分で下に降りれないやつが飛び降りれるわけねーだろー」 けたけた笑う山崎くん、私は恥ずかしくて握ってた手を振り解いて置いていたブレザーと鞄を拾い上げて逃げるように帰ろうとした。 「白石、また明日なーっお前意外と困ったり怒ったりした顔も出来んだな、そっちのが可愛いと思うぜ」 「っ…よ、余計なお世話です!!」 ドキドキうるさい心臓に鞭をうって走る私。 だけど、少し勇気を出してよかったな、少し変われた気がする。 |