ジノザキ






手渡した折に指先が接触したようだった。

「冷たっ…」
「ん、何?」

「手冷たいんスね」
「ああ気付かなかったよ、いつもこうだから」

彼は平常より僅かばかりか目を開いていた。


「普通もっと温度有るでしょ」
「そうなんだ」

彼の圧倒されたような表情は好きだった。どこか幼いのだ。


「ちゃんとアップして下さいよ」
「ありがとう、ザッキー」




襟を立てる手が首筋に触った。その指は相も変わらず温度に乏しかった。

冷たいだけだった。
それだけである。



それなのに冷たいと言われた事が嬉しかった。

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