ガミタン










自慢話をしよう、実は本人でさえも知らない癖を自分だけが知っているのだ。それだけだ。

何かを急かしたいとき決まって右手の中指と薬指をしきりに引っ張る。

話しながら、歩きながら、結構さり気ない。



「あー、名前出てこない、誰だったっけか」

中指をいじり始めた。あ、まただと過ぎる。そして思わずにたついた。

「何だよニヤニヤして。気持ちわりぃ」
「スンマセン、好きだなあと思って」
「は?何が」

教えるつもりは小指の先程も無い。


様子を見ると、指を組んでから左手を上に持ち上げて右手の指を引っ張っていた。


あれをやらないと落ち着かないんかね。


不意に彼の左手を取り上げてみた。意外と細い手首を掴むと、その手は力んだ。

「痛そう」
「…」

取り上げられた左手は拳を握った。残った右手は指を反らす程伸ばしていた。


「知らねえよ」


彼が知りたがった人の名も、この癖も知っているまま教えなかった。



「でもね、俺にも独占欲とか有るんスよ。」
「何なのそれ、良いから手離せってば」
「やだー」



野暮な台詞を囁くには歳を取りすぎた。その手が温い、温い温い温い。

離したらきっとその後が涼しいことも知っている。



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