こっちだよ!と犬…シロに案内された先は、予想通り黒髪切れ目な特徴のあるイケメンがいた。細身で長身な体にミスマッチな厳つい金棒。しかしそれを軽々と振り回す腕力とドS具合はばっちり記憶に残っている。
こちらに気付いた彼と目が合えば一瞬その切れ目が見開かれたものの、すぐにポーカーフェイスに戻った。そのポーカーフェイスに私がやらなければいけない事の説明や、任務の間の衣食住についての相談をしなくてはいけないと思うと、今更ながらに少し憂鬱。だってドSで動物好きしかデータがない。働かざる者食うべからずとか素で言うような彼は、任務の間衣食住は保護するが○○して貰いますよ、なんて何か要求してきそうだから。あと、異世界から来たなんて言った瞬間嘗めてんのか、と金棒が飛んで来そうだから。
正直そんなイメージしかありませんごめんなさい。

…なんて考えてるとは一ミリたりとも感じさせない笑顔を作る。こっちは一応色々な所に行っているのだ。もっと危険な世界とか相手とかも経験済みなのだ。怖がる必要はない。
大丈夫、と頭の中で念じながら普通に挨拶。彼を見つけてからの時間、僅か2秒。…私、確実に成長してる。


「どうも、はじめまして鬼灯様」

「はじめまして…。貴方、鬼じゃありませんね?生者がなぜここにいるんです」




…早速ばれた。まあ隠そうともしてなかったから別にいいのだが。それにしても亡者と生者の違いは何だろう。顔色?服のぼろぼろ具合?それともオーラとか見えたりするのだろうか。まさかの鬼灯様、念能力者疑惑。
鬼灯様に用があるって言ってたから連れて来たんだよーえらいー?ええ、ありがとうございます…なんて視線を落としてシロと会話する彼に、はてさてどう説明しようか。信じて貰えるように、言葉はこの世界に合うようなものをチョイスして。




「…少し長くなりますが、話を聞いて頂いてもよろしいでしょうか?私がここにいる理由もきちんと説明しますので」

「……わかりました」





それからはもう、毎度お馴染みとなった説明タイムだ。



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