……今まで色々な世界を周ったけど、これまたシュールな世界に飛ばしてくれたもんだ。

最初に抱いた感想はそれだった。
頭から生えた人間らしからぬ角も、ボロボロの人間達も、何だか薄暗くて真っ赤で骸骨が散乱している光景も…漫画で見る限りは何とも無かったけど、こうして現実として見るとかなりグロテスク。ああ、用心の為と言いながらボールから出ていた紫優が呆然としている。そうだよね、こんなグロいの今までそうそう無かったもんね。…教育的にとてもよろしくないので今すぐボールに戻したいです。



しかし状況をなんとなく理解した私は、ふ、と肩の力を抜いた。確かにこの人間をいたぶり続ける光景を見続けるのは精神衛生上余り良く無い。でもそれは彼らが仕事でやってるのであって、無差別に襲って来るような人…いや、鬼達じゃない事がわかっている以上、ほっと安心したのだ。ここなら戦闘もないし、話せばわかる人…鬼ばかりだ。それを考えたらすんなりと任務が終わりそうで、寧ろ地獄様々だった。

ぽかん、と今だ呆然とする紫優の肩を軽く叩いて笑って見せる。はっと我にかえりながらも私の様子だけでこの世界の安全性を察したのであろう、納得したように頷いた。紫優ったら本当に聞き分けがいい良い子!…親ばかなのは今更です。
安全を確認したところで紫優をボールに戻せば、カタカタと微妙に揺れていた腰のボールも大人しくなった。うちの相棒達は本当に空気読める。
…さて、どうしようか。周囲を見渡せば亡者をビシバシといたぶる鬼の皆さん。お仕事中に話し掛けるのもなあ…何だか申し訳なく感じてしまう。…と、思考を巡らせていたら不意に足元に気配を感じた。視線をそちらにやれば、白いモコモコの少しぽちゃっとしたイメージの犬。



「……だれ?」





見た事ない人がいたから話し掛けてみたよ!という好奇心たっぷりのまん丸な目を持った犬に、思わずキュンとする。あらかわいい。
…そういえばこの犬はあの人と仲が良かったはずだ。案内して貰えるんじゃないか?

一瞬で出たその答えに従う。ゆっくりとしゃがんでなるべく犬の目線に近付き、にっこり自分の持てる限りの優しい笑顔で。


「私ね、少し迷っちゃったの。鬼灯様の所に生きたいんだけど…」


「鬼灯様の?じゃあ今から行く所だし、連れて行ってあげる!」


「本当?ありがとう」




尻尾をブンブン振り、先導する姿に更に胸キュン。この子、とても可愛いです。しばらく見れてないヨーテリーやガーディを思い出すなあ…。
…さて。道案内してくれる人も見つかったし、これからどうするか考えますか。まあ全てはこの世界の主人公…ドSな彼次第なんですけどね。












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