次はどこなんだろうと恐る恐る目を開けば、お花畑に桃畑。ウサギ達が可愛らしくぴょんぴょんと跳ねていて、何だかキラキラした世界。

…ここは、一体、どこぞ?
余り自分の記憶に無い所に来てしまったのだろうか、少し不安になってくる。こんなに綺麗な場所がある漫画なんてあっただろうか?こんな、美しすぎてまるで現世ではないような…。現世、では、ない。それは私の中で大きなヒントになったような気がした。現世では無いといったら、あれか。違う宗教のお偉いさん二人組が現世で同居するやつか。悟った人とか出て来るやつか。それなら天国だって、極楽だってある。もしやその世界の…雰囲気からして和風なので、極楽ではないだろうか。
なら、大丈夫。私が難しい顔をしていたから身構えてたのであろう、体を強張らせる愛息子の手をそっと掴む。目が合った瞬間この世界の安全性を悟ったのか、肩の力が抜かれ薄く微笑んだ。…うん、可愛い。ここが安全な場所だとわかった途端親バカモードになる私ですがなにか。

…さて。この世界がどこかもわかった事だし早速聞き込みに行きますか。丁度近くに家も見えるし、あの平屋を当たってみよう。
どこか名残惜しそうな紫優からそっと手を離し、跳ねるウサギ達を踏まないように避けながら歩く。入り口の前に辿り着けば、どこからか草の匂い。…これは、漢方か何かかな?他の世界で培われた嗅覚を用いながら、木の扉を叩いた。


トントン…





「…あー、桃タロー君?僕いま寝不足で怠いから勝手に開けてよ」




たおたろー君?誰だそれ。
しかも寝不足で怠いなんて…何というか、かなり俗世的な理由だ。まあ神の息子がブログやってたりネトゲやってたりする世界だし、こういうテンションもアリか。でも誰かと勘違いしてるみたいだし、とにかく出て来て貰わなくては。



「すみません、少しお尋ねしたい事があるんですけど…」


「いらっしゃいませ。いやあごめんね?こんな可愛い子を外で待たせちゃうなんて」



「え!?」





……今起こった事をありのまま、話そう。私は中の人に向かって話し掛けたんだ。そしたら、ガタガタって音がして急に扉がガラッと開いて男の人の手が腰に…え、お兄さんテレポート使えるの?ていうか怠いから勝手に開けろって言ったよね?あとこの人の顔どこかで……
パニック状態で軽くフリーズした私達、いち早く回復したのは紫優だった。理由、多分私の腰に添えられた彼の手が見えたから。愛息子は私に寄って来る男には厳しいのです。


バチンッ



「痛い!?」



[母さんに気安く触るな…!]



「え、何この動物!?新種のUMAかなんか!?」



[ゆーま…?]



「自分で自分の正体わかってない!?」





いい音したなあ、とかセリフのテンポいいなあ、とかぼんやりと考える中ああそっか、と相手を見て納得した。そりゃあ見た事あると思う訳だし、この人なら女の子に過剰反応しても不思議じゃあない。というか、この人がいるって事はこの世界は…あーうん、わかってきたぞ。更に言うならここは極楽じゃなくて桃源郷だ。
私が色々と状況把握する中、不意に手に感じる温もり。ふと我に返ると、なぜかそっと手が添えられていた。…あれ、何時の間に手ぇ握られた…?




「いやあ、UMAは置いとくとして、君この辺で見ない顔だよねえ。紫の髪なんて珍しいし…ああ、瞳も紫なんだ、凄く神秘的でとても可愛らしいたいっ!?」




ああ、口説かれてるのか。そう理解した瞬間には手を引かれて既に家の中。気付いたらまた顔が目の前にあるし、その涼しげな切れ目でじっと見つめられてるし、彼のそのナンパ力は大したものだ。しかしその上をいったのが私の愛息子。私にはダメージを一切与えずに彼の手だけを叩き落とすというとても器用な事をしてくれた。うわあ、手ぇ真っ赤。
そして上から感じる、威圧感。



[……次は無い……!]



「……はいはい、わかったよ。話か何かあるんでしょ?今お茶入れるから」





流石の彼も紫優の本気を悟ったのか、仕方ないとばかりに私から離れた。この普通の人間だったら泣いて逃げ出す圧力にもそのスタンスを変えないなんて、やはり神獣と言うべきか何というか…。ああでも普段から威圧感たっぷりの人とやり合ってるから慣れてるのかな、なんて考えながら、体に良さそうなお茶を淹れる彼をぼんやりと見ていた。まあ彼は頭も柔軟そうだし説明も上手くいくかな、なんて。



しかし私が説明している最中にも所々私を口説き文句やボディタッチを挟んだ為、桃太郎が来る頃には彼の素敵な顔が台無しになってしまったのはまた別の話。





*──────

深様リクエスト、赤黒if、もし夢主が一番最初に出会ったのが白澤様だったら、でした。

息子無双になるのでは、というお言葉でしたが、白澤様のナンパスキルも伴って、白澤様が夢主にちょっかいかける→紫優が払いのける、のループになるのではないかと思われます。あと普段から金棒ブンブン振り回す人と仲が悪い事から、そこまで怯えずに紫優にも立ち向かって行くのではないかと。伊達に長生きしてないぜ!って事でしょうか。
あ、夢主は女の子みんなに対してこういう人だからなー…という解釈の仕方です。だから手を握られようが腰に腕回されようが動揺しません。それに警戒心持て!と紫優が怒らないのは盲目なマザコンだからです。でも多分、緋翼辺りは怒ります(笑)

しかし今回は某お兄さんネタを沢山入れてしまい本当に申し訳ない…!書き終わってから、あれ、これ深様知らなかったらどうすんの?と我に返りました。私のばか!あの、本当に申し訳ございませんでした…!

でも今回まだ赤黒で出せずにいる白澤様を書けて楽しかったです!
深様、リクエスト本当にありがとうございました!


※この小説は深様のみお持ち帰り頂けます






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