あのくそししょうめ、と胸の中汚い言葉で愚痴を言えば脳内で思い出される爽やかな笑顔。ハンター試験受けて来いよ、楽しいぜ?あと取り敢えずハンター証取って来いよ、じゃなきゃあそこには行かせらんねえなーケッケッケッ…楽しい事になってるのはアンタの頭だ、戦闘人種みたいな髪型しやがって。テメエの必殺技元気玉かごらあ。子供を捨てながら食べるご飯は美味しいですか父親失格のオッサンよう…ああいけない、こんな言葉遣い子供に悪影響だわ。とにかくあんなくそ師匠のことは頭から…



「ねえキミ!名前なんて言うの?」




追い出そう、と続けようとして自分にかけられた声の方に振り向く。明るく元気、子供らしくて純粋そうな少年。普段ならあら可愛いわね、と大人の余裕たっぷりに目を細めただろう。しかしそれが先ほどから頭の中で悪口を言い続けていた相手そっくりな子供だったらどうなるか。…引きつった笑みで全てをお察し下さい。
子供は私のそんな心情を知る由も無く、もう一度同じ笑顔でキミの名前は?と聞いてくる。隣にいる銀髪少年も興味があるようにこちらに視線を送ってきた。これはスルーすべきではないだろう。



「私はアヤ。あなたは?」


「俺はゴン!ゴン=フリークス!」



ええ、存じ上げておりますとも。お父様にはたいへん…たいっへんお世話になりましたし、色々な意味で君の事この世界にいる間は忘れられません。どこか遠い目をしてその純粋オーラを一身に受けていると、彼はそれでね、と付けたした。



「こっちはキルア!」


「キルア=ゾルディック。よろしく」




ええ、あなたも存じ上げておりますとも。あのお山のてっぺんの大きなお家に住むキュイイインなお母さんとマッチョなお父さんと生涯現役なおじいさんとキャラが濃い兄弟がいるんですよね。そして何より暗殺者一家ですよね。
絶対にお近付きになりたくない相手だが、こんな小さい子相手にすみませんよろしくしたくありません、なんて言いたくもないし言えるわけもない。再び顔の筋肉を必死に動かして挨拶を返す。




「キルアね、よろしく」



この日本人のよろしくの挨拶というのは、本当に仲良くなった訳ではなく顔見知り程度の関係になりましたね名前くらいは覚えましたよ、という一応知り合いのスタンスを保つ儀式だと思う。なのでここは日本人らしく、彼らとは深く関わらない人間関係が希薄な感じでいきたい。いきたい、のに……




「アヤはどこから来たの?」


「ちょっと遠い所かなー」


「遠い、ねえ…。地名もちゃんと言えねえとかお前いくつだよ」



「あのねえキルア…年上にそういう口の聞き方しないの」



「年上ったってそんな変わんないだろ?」



「……君達、幾つ?」




なんで話してるんだろう、とか痛くなる頭を抑えつつ…なんてやってたら更に頭痛。明らかに年上の人に対する話し方がなってない、と思ったら…。確かハンターの主人公達って、私の覚えてる限りでは…



「11だけど」




…ふざけんなよ、ちくしょう。
再び汚く罵ってしまった自分に舌打ち。なんてったって私はそんなに幼く見られてしまうのか。確かに童顔で小さいし二十歳以上に見られた事がないのは認めよう。でも11歳はないだろう。今までの最年少記録であるそれに、私は心の中でひっそりと涙した。




「……私、あなた達より10年は生きてるからね」



言って、その場から離れる。嘘だ!えええ!?じゃあレオリオより年上!?信じられねーあのオッサンと正反対だな、なんて声は無視した。私にそこまではしゃげる元気はない。実は話を聞いていたのであろう前を走る試験官のサトツさんの、こいつ念でどうにかしてるのか?という探るような気配もスルーだ。

私の年齢の話で盛り上がりを見せる二人から少し離れた後、大きなため息を一つ。そして、腰に付けたボールから一つを取り出し、軽く投げた。一瞬閃光弾のように光るそれに横を走る受験生達が身構えるのが見えたが、知らんぷりでそこから出た彼に話し掛ける。



「……蒼、よろしく」




[御意。主殿、乗って下され]





言われて自分よりも少し小さい体躯にピョンと乗る。蒼は見事にキャッチして膝と背中を支え…要するに、お姫様抱っこと呼ばれる格好で私を運んだ。ああ、心の栄養補給。お願い誰か私の心にいやしのひかりして。
そしてそれを見ていた誰か…とても気持ち悪いオーラを持つ名前も呼びたくない誰かさんがこちらに近付いて来た。



「ねえキミ、それどうやったの★」




「…………」






変態と話してはいけない、それは容易に付け上がるからである。ノボリさんも変な人と話してはいけないって言っていた。この人は変な人で変態で青い果実ハンターなのだ。いくらイケメンでも絶対に関わってはいけない。つれないなあ、とか言われてるけど知ったこっちゃない。変に話して旅団フラグとか立てられたら目も当てられない。
ぎゅう、と蒼の腕を握れば、哀れんだ目で見られた。…わかってくれるのは彼らだけだ。体力は何とかなるが、精神的にはもう無理だ。場所はわかってるのに任務をさせてくれないくそししょー、望んでもない原作介入、そして主要キャラ達との出会い。




「……疲れた………」




重い重いため息を吐き出し、蒼の胸に擦り寄った。この世界は私の心のHPをギリギリと削っていきます。





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龍様リクエスト、君色夢主が仲間達とハンター試験を受けたら、でした。
仲間達と、というリクエストなのに蒼しか出てなくて申し訳ない…!そして色々詰め込んだらごちゃごちゃしました。詰め込み過ぎ!

夢主はジンに拾われてなぜか手持ちメンバーまで念を覚えた状態でハンター試験を受けさせられます。
時空の歪みがあるのは多分GI、ジンなら入らせる事も出来るし場所もわかってるのにそこに行けないうえ、原作介入させられて夢主の心のHPがギリギリ減っていきます(笑)
ハンター試験も少しでも癒される為に、実力はあるのに手持ち達の力をフル活用しつつやっていくのではないかと。

本当に楽しいリクエストで手持ちの念系統まで考えちゃいました!リクエストありがとうございました!

※この作品は龍様のみ、持ち帰り可能となります



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