この気持ちは何と表したらいいのか。高揚感と言うには胸が煮えたぎるように熱い。興奮…そんな言葉では言い表せない。ただただせり上がる想いに手が震える。彼女が…アヤが、目の前にいるのだ。
あの掴めなかった手を、最期の顔を夢で何度見たか。彼女がいなければ意味が無いと絶望する仲間に、生ける屍となった紫優。アヤを失ってからの彼らの表情もまた、思い出したくない。彼女で回っていた世界は崩壊し、心が壊れ、仲間も壊れていった。絶対に亡くしてはいけなかった人。絶対に亡くしたくなかった人。何を犠牲にしてでも取り戻したかった人だった。


…それが今、目の前にいるのだ。
あの声が俺の名前を呼んだ。今は伏せているが、あの目が俺を映した。少し色合いが変わってはいるが、変わらない温かさを持つ紫が。また、会えた。
俺を見た瞬間に見覚えのあるオーラを体から吹き出させ、あの生命力を身に纏って。あの時程ではないが、横たわりながらもゆっくりとオーラを体に収めて見せ。彼女は、汗一つかかずに気絶している。


「……早く目、覚ませよ…」




誰もいない会議室のソファーの上。そこに眠るように横たわるアヤの頬にそっと触れると、糸のようにオーラが絡んで来た。紫のそれは、俺の赤いオーラと混じり合う。…それをじっと見つめ…どこからか湧き上がる優越感に、俺は口角を上げた。


…そうだ、ここには俺達しかいない。仲間達は確かに大切で愛おしい存在だったが、彼女とはやはりまた別なのだ。まるで出会った時のような感覚。世界で唯一を見付けたような特別な気持ち。それはあの時から歪み、形を変え、今ここに独占欲として心に落ち着いた。
…誰もいないのだ。まるで彼女を包み込むような美桜も、忠誠を誓う蒼も、光を求め続けた黄雷も、絶対的な力で守った春楡も…彼女の愛情を誰よりも注がれた紫優だって、ここにはいない。アヤと俺は二人…そう、今度こそ本当に二人ぼっちになった。


「……なあ、アヤ…早く目ぇ覚ませよ…」



そしてまた、その目に俺を…俺だけを映してくれ。







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