「…わかりました」
「ありがとう」
九尾は満足そうににっこり笑うとやがてその姿は消えて見えなくなった。
「……私こそ、ありがとう…」
八千重はそっと目を閉じた。
誰かが名を呼ぶ声が聞こえる。
『お千重さん』
どうやら夢から覚める時間のようだ。
そう考えると、八千重の意識は急速に浮上していった。
長い夢が漸く終わる。
身体は休まった気がしないのに、夢に落ちる前の澱んだ気持ちや悩みは、綺麗に消えてしまっていた。
名を呼ぶ声に導かれるように八千重はゆっくりと目を覚ました。
(ほんとうの恩人)
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