アスカに指摘されて、ばつが悪そうにハリーは頬を掻く。

「何もなかったから良かったけれど…これからは気を付けて」
「うん。……でも、あのサンドイッチ美味しかったなあ」

ハリーがしみじみ言えば、アスカは息を吐くが、その口端は上がっていた。

「美味しかったなら、尚更ハグリッドじゃないな」

フレッドの言葉に、ハリーもアスカも、ロンとジョージも笑った。

「ふふ、じゃあハリーは、それからロンとフレッド、ジョージとドライブして今に至る訳ね」
「そうだね」
「あたしもドライブしてみたかったなー。ロンたら、手紙に肝心な事は書いてないし」

チロリと横目でロンを見れば、狼狽えながらも口を開ける。

「でも、一緒に行ってたら、君もママに怒られてたよ。きっと」
「――ああ、それもそうか」

アスカが納得すれば、ロンはやれやれと肩を竦め、5人は話に集中していつの間にか疎かになっていた庭小人の駆除を再開した。
再開してみれば、あっという間に宙を飛ぶ庭小人で空が埋め尽くされたようになった。

「ハリー、もう慣れたもんだな」

ジョージが一度に5、6匹を取り押さえながら言う。

「連中はあんまり賢くないだろ?」
「庭小人駆除が始まったとわかると、連中は寄ってたかって見物に来るんだよ。巣穴の中でじっとしている方が安全だっていい加減わかっても良い頃なのにさ」

やがて、外の草むらに落ちた庭小人の群れが、あちこちからだらだらと列を作り、小さな背を丸めて歩き出した。
巣穴へ戻る道を探しているのだろう。

「また戻って来るさ」

小人達が草むらの向こうの垣根の中へと姿を眩ますのを見ながらロンが言う。

「連中はここが気に入ってるんだから…――パパったら連中に甘いんだ。面白い奴らだと思ってるらしくて…」

ちょうどその時、玄関のドアがバタンと音を発てた。

「噂をすれば、だ!」
「親父が帰って来た!」

ロンはバッと駆け出し、ハリーもそれに続く。
アスカもそれに続こうとして、2つの手にガッと肩を掴まれた。
2つの手の主は、固まるアスカの耳元で囁く。

「「アスカ」」
「!?っ」

ハリーとロンは、気付かずに家に駆け戻って行く。
アスカは溜め息吐いてゆっくり振り返った。

「フレッド、ジョージ、貴方達何を勘違いしているのかわからないけど、あたしはベル。ベル・ダンブルドア。アスカじゃないわ」

言って二人を見れば、フレッドとジョージは顔を見合わせる。

「俺達も、まさかと思った」
「それであの日、鎌を掛けたんだ」

あの日…と言われて、アスカの脳裏に夏休み休暇に入る時に駅でかけられた言葉が蘇った。

『『じゃあな、ベル』』
『うん、フレッドとジョージも悪戯程々にね』
『わかってるよ、アスカもちゃんと勉強しろよ』

(あたし、鎌掛けられてたんかい!)

「「そしたら君は返事をしたじゃないか!」」
「あ、あれは流れでつい返事しただけよ」
「じゃあ、なんで俺達からの手紙を無視してたんだ?」
「何通も送ったのに」
「あ〜…ごめん、正直面倒なことになりそうで…つい…」
「「えぇ!?」」

アスカは気まずそうに頭を掻くと、双子は、呆れたような、ショックを受けたような顔をした。

「ごめんね」
「なんだー…」
「特ダネ掴んだと思ったのになー」

アスカは肩を落とす双子を見て笑う。

「さ、行きましょ」

アスカは双子を促し、先に歩み出す。
双子がガッカリしたように後に続いた。

(良かった。あたしの正体がバレたわけじゃなかったんだ)

アスカは後ろの二人に気付かれないようにホッと息を吐いた。

「だから言っただろ? やっぱりあの地図が間違えただけなんだ」
「けど、あの地図は正確で、今までにも何度も助けられたじゃないか」

(―――地図?)

聞こえてくる双子の会話に、アスカは片眉を上げる。

「そりゃあそうだけど、でもあの地図はずっと前に作られたものなんだ。現に今は使えない隠し通路もあるだろ? きっと、ベルと昔ホグワーツにいたアスカ・フィーレンと地図が間違えてるんだ」
「うーん…そうかも知れないけど、我らが尊敬する先代の悪戯仕掛人が作ったものなんだぜ? 道が使えなくなってた事はあれど、人を間違えたことなんて…「待って!!」わ! な、なんだよベル」
「急に止まるなよ」

アスカは信じられない気持ちだった。
故に思わず立ち止まり、声を出してしまった。

「貴方達、まさか……“地図”を持ってるの?」「地図?」
「なんの地図のことだ?」

怪訝な顔で同じ顔を見合わせる双子に、アスカは一歩詰め寄る。

「“忍びの地図”よ!」
「「ああ!」」

双子は揃って手を打つ。

「それなら持っているとも」
「ほら」

取り出されたのは確かに“忍びの地図”だ。
アスカの頭が熱くなる。

「どうしてそれを貴方達が持ってるの? それはフィルチに没収されて―――――…あ、」

しまった!、と思ったがもう遅かった。
前にもこんなことがあったではないか。
アスカは自分の学習能力の無さに嫌気がさした。

「―――もう気付いてると思うけど」
「今も、鎌を掛けたんだ」

双子はニヤニヤと笑っている。

(ああ、あたしはなんてバカなの…)

アスカは、目元を手で覆った。
今、きっと自分は真っ青な顔をしているに違いない、とアスカは思った。















To be Continued.