アスカはホッと息を吐く。
ハグリッドは、あっという間にアーサーとルシウスを引き離した。
アーサーは唇を切り、ルシウスの目は、分厚い本で打たれた痕があった。
ルシウスの手には、まだ、ジニーの変身術の古本が握られていた。
目を怪しくギラギラ光らせて、それをジニーの方へ突き出しながら、ルシウスは捨て台詞を放った。

「ほら、チビ、君の本だ。君の父親にしてみれば、これが精一杯だろう」
「貴方は、歩くのも精一杯に見えますけどね」

ポツリと呟いたアスカの声を耳聡く聞き咎め、ルシウスは初めてアスカを正面から視界に入れる。

「君……いや、貴女は――…」
「パパ、そいつがベル・ダンブルドアだ」

目を見張ったルシウスに、アスカは冷めた目を向ける。
アスカは昔から、出会った時からこの男が嫌いだった。

「―――ほう…」

ドラコの言葉に、ルシウスはどこか感慨深そうな目で値踏みするようにアスカを見たが、暫くすると現れた時と同じような薄ら笑いを浮かべ、ドラコに目で合図してさっさと店から出て行った。

「ジニー、ハーマイオニー、大丈夫? 怪我はない?」
「う、うん…」
「私達は大丈夫よ、さっきはありがとうベル」

どういたしまして、と微笑み、アスカはルシウスの視線を思い出してぞわりと身震いした。

あいつのことはほっておけ、根っとから腐ってる、というハグリッドに背を押され、アスカ達は店の外へ出た。
外にはもう、マルフォイ親子の姿はなかった。

「子供達になんて良いお手本を見せてくれたものですこと。公衆の面前で取っ組み合いだなんて――ギルデロイ・ロックハートがいったいどう思ったか…」

モリーの怒りに震えた声に、アスカはすっかり忘れていた事を思い出された。

「ギルデロイ・ロックハート!!」

突然アスカが叫ぶものだから、皆がビクリと肩を揺らし、目を丸くさせた。
そんなこと、考えに耽っているアスカは気づくはずもなく、頭を抱える。

(今年の闇の魔術に対する防衛術の教授があんな男だなんて――! ちゃんとした授業できるの? しかも、ダンブルドア先生の推薦!? あんの狸爺は何考えてるんだ!)

闇の魔術に対する防衛術は、ハリー達…特にヴォルデモートに狙われているハリーにとってとても大切な授業だ。
それを、あんな顔と法螺話(と、アスカは考えている)だけで、中身空っぽそうな男に任せるだなんて!、とアスカは今すぐにでもダンブルドアを問い質したい心持ちだった。

「あぁあアッもうっ!!」

何故か怒り心頭なアスカを遠巻きに、一行は漏れ鍋へと向かった。
今年のホグワーツはどうなってしまうのか…そう考えるとアスカは、憂鬱になる気持ちを隠せなかった。















To be Continued.