「………セブルス…」
アスカは困惑しながら、セブルスが姿眩ましした場所を見つめて呟く。
「どうして…?」
(どんな意味なの? どうしてそんな寂しい事を言うの?)
ストン、と力が抜けたように椅子に座る。
その反動で、テーブルに置かれたままのセブルスが淹れた紅茶がカップの中で波紋を作り揺れた。
「………熱っ、」
いつも突然訪れるソレは、今回も同じように突然訪れた。
眼が熱くなり、赤く変わる。
脳裏に流れる映像は、石の暖炉の中に立っている煤だらけのハリー。
ハリーの眼鏡は壊れてヒビが入っている。
続いて流れてきたのは、薄暗いどこかの店と思われる映像。
その店と思われるショーケースに飾られているのは、クッションに載せられた萎びた手や血に染まったトランプ、更には義眼がギロリと目を剥いている。
壁には邪悪な表情の仮面がこちらを見下ろし、天井からは錆び付いた刺だらけの拷問道具らしきものがぶら下がり、カウンターには人骨がばら積みになっている。
それを見ただけで、正規の魔法使いの店ではないなとアスカは思う。
埃で汚れた窓の外に見える狭い通りに、アスカは見覚えがあった。
その通りの名が口から出るよりも先に、眼の熱はサッと冷めた。
引いた熱に息を吐き、アスカは顔を顰める。
「―――…ハリーったら、どうしてノクターン横丁なんかに?」
ノクターン横丁とは、ダイアゴン横丁から少し外れた場所にある通りで、違法なものや呪われた魔法アイテムや呪いをかけるアイテム等正規の店では中々売っていない怪しい商品を売っている店が軒を連ね、危ない魔法使いや危ない魔女達が集まる場所だ。
ハリーがそんな場所にある店に用事があるようには到底思えないし、ダイアゴン横丁に買い物に行った際に迷子にでもなってしまったのだろうか?
だが、煤だらけで暖炉の中に立っていた事を考えると、何やら辻褄が合わない気がする。
「暖炉…暖炉―――――はっ、そうか暖炉!」
そこでアスカは思い付いたようにポンと手を打った。
「フルーパウダーを使ったんだ! だけどきっとハリーは使った事がない筈だから、失敗しちゃったんだわ」
口に出して言うと、更にしっくりと来て、アスカは、1人で頷く。
(こりゃ、新学期始まる前から大変だわ)
ダイアゴン横丁に行った時は、早々にハリーを助けにノクターン横丁に繰り出す事に決まった。
アスカは、苦笑いしてカップに残った紅茶を飲んだ。
紅茶は冷えて、冷たくなっていた。
「―――――あ、ヤバい!」
アスカは、漸くそこで自分が泊まりに来るのを待っている友人の存在を思い出し、慌てて準備を始めたのであった。
To be Continued.
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