ポケ擬短編 | ナノ


▼ 3

しかし、それが良くありませんでした。紅緒が躱した奥には、釣殿にいる夜白達がいたのです。それに気付いた界雷は思わず声を上げましたが、時既に遅し。落雷は釣殿目掛けて飛んでいきます。

「っ逃げろ!!!!」

界雷の叫びに反応したセシールが、膝から沈を押し退け、夜白と沈の前に立ちました。反射的によろめいた沈を抱き止めた夜白は、セシールを心配げに視線を向けました。

「セシール殿っ!!」

セシールは両手を振り上げ、細殿と釣殿の間にある池の水を打ち上げました。雷は水壁となった池の水に吸い込まれるように刺さり、静まっていきます。しかし、セシールが予想していたよりも落雷の力は大きく、力に押された反動で腕が弾かれてしまいました。そのせいで水壁の魔導が解けてしまい、落雷から流れ出た電気がセシールに直撃しました。

「きゃあっ!!」

「セシールッ!!」

全身に電気を受け、膝をついて倒れ込むセシール。水の加護を受けているセシールには、常人よりも電気は強く影響されてしまいます。身体中をビリビリと麻痺するような痛みが襲います。それに声を上げないよう、セシールは動くことも出来ず、堪え忍んでおりました。

「大丈夫!?セシール!!」

「沈、様……お怪我は…?」

「僕は丈夫でセシールよりもいくらか耐性もあるから何ともないよ。不利なのに無茶して…!!」

倒れたセシールに駆け寄って身体を擦る沈。しかし触れられる度に摩擦で体内の電気が一層増すのか、手が動く度に苦しそうに顔を歪めます。沈の手を取り静止した夜白は、細殿にいる界雷を呼びました。

「界雷!!」

「承知してます!!」

既に呼ばれる前からこちらへ向かっていた界雷は、翼をはためかせて釣殿の手摺に舞い降りると、直ぐ様セシールを抱き抱えました。

「安福殿で良いですか?」

「はい、早く体内の電気を逃がしてあげて下さい」

夜白に言われ、頷いて廊下の奥へと走り去る界雷。その後ろ姿を見届けると、夜白は沈の手を優しく包み込んだ。セシールに触れた時にかかった電気が、掌越しに伝わってくる。

「沈様も手当てしましょう。紅緒、沈様を清涼殿に」

「は、はい」

罪悪感を感じていた紅緒は、夜白に言われると直ぐ様沈を夜白共々連れ出した。


§


医務室である安福殿へと連れてこられたセシールは、ゆっくりと布団に下ろされ手当てを受けておりました。手当てに邪魔な帽子とローブは外され、無造作に畳に投げ捨てられております。

「来る時にも電気は吸収したが、まだ出せてない分が結構あるな……」

界雷が腕を掴むと、痺れからかうっと声を漏らすセシール。その様子に歯切れ悪そうに界雷が口を開いた。

「電気は血液を通して身体を循環する。俺様は直接触った箇所から電気を吸収出来るんだ……その、…血液が作られる心臓付近なら手っ取り早く取り除いてやれるんだが…」

言っている内に段々と顔を赤らめる界雷。つまりは治療の為に胸を触らせろと言っているのであります。それこそ今まで女性と馴れ合ったことなどない界雷にとって、そういう気がないとしても胸を触るということに少なからず羞恥心がありましたから、おいそれと触れてしまう事は憚れました。

しかしセシールは苦し気な顔を上げ、界雷に微笑みました。

「私の身を案じての事なのは承知しております。憚らず、界雷様の好きにして下さいまし」

そう言って受け入れる様に身体を布団に預けるセシール。その姿に燃える程の言い表せない感情が込み上げてきましたが、己を叱咤し界雷は意を決してセシールに手を伸ばしました。

少し早く、しかし規則的に鳴る鼓動が服越しに伝わってきます。それに思わず自分の鼓動も早くなっているようでした。触れた指先からビリビリと電気が流れてくるのが解ります。粗方電気を抜き終わった時には、界雷は良く分からない汗をかきグッタリしておりました。へたり込む界雷の前には痺れが抜けて元気になったセシールが座っています。

「ありがとう御座います、界雷様。すっかり痺れも抜けました」

「そうか、なら良かった…」

にこやかにお礼を言うセシールとは裏腹に、窶れ気味に微笑む界雷。その姿を見て暫し考えたセシールは、ドレスのポケットからハンカチを取り出すと、界雷にすり寄って行きました。至近距離にまで迫るセシールに、思わず後退る界雷。

「な、何して、!?」

「あ、いえ。随分と疲労困憊しているようでしたので、汗を拭おうと…」

「い、いい!!大丈夫だ!!」

セシールの顔を見ると、界雷はどうしても先程触れた胸の柔らかな感触が思い出されて仕方ありませんでした。顔を真っ赤にして必死に断った界雷は、奥の襖を勢いよく開けて隣の清涼殿にいる3人に治療が完了した旨を伝えました。

耳まで真っ赤にしていた界雷を思い出し、セシールは1人微笑むのでありました。


end...
………………………………………………

界雷君とセシールの馴れ初め話、みたいな感じで書いてみました!!少し明治文学風に書いてみましたが、全然それっぽくならなくて泣きたい゚゚(^ω^)°゜゚

安定のラッキースケベ界雷君が書きたかった。満足です(*´I`*)

友情出演で夜白様と紅緒さんもお借りしました!!口調とか動きおかしかったらすみません_(:3 」∠)_

海の社とかも社って言ってんのに構造がほぼ寝殿造だし……。設定クラッシュが否めない。私の中のイメージが、神社と内裏のMix構造だったので、こんなとんでも建築が出来ました。私は家を建てる才能が無いことが判明しましたね!!

書いてて楽しかったです!!界雷君、これからもセシールをよろしくして下さい。そしてラッキースケベをして下さい!!←←





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