さよならだけが人生だ | ナノ
まさと喧嘩したあとお互い疲れはて、そのまま寝てしまった。
同じベッドに二人、ヒナのように丸まって、ぴったりと離れないように寝た。

目が覚ますと横でまさがすーすー寝息をたてていた。

なんだかお腹がいたい。
重たい体を引きずるようにのろのろと風呂場へ向かう。顔を軽く洗って鏡を見てみると顔にべっとりと赤いものがついていた。
つん、と鉄臭いにおい。


「あ、あ、」


それが何なのかわかった瞬間にお腹から胃やら腸やら飛び出る感覚に陥った。

急に体が弛緩する。
大きな音をたてて崩れ落ちた。

「ま、さ…」



浅い息、冷たいからだ、とろとろとまどろむ。




ゆっくり、ゆっくりと意識を手放す。








「なまえ、おかん帰ってくる。」

目が覚めれば目の前にはまさがいた。
お腹と顔を触ってみてもどこからも血なんか出ていなかった。
代わりに頬がひどく痛む。

「殴りすぎたな、すまん。」


痣ができているであろう頬にちゅ、と優しくキスをする。

まさはいつもそうだ。
喧嘩したあとはすごく優しい。
普段もすごく優しいけど、喧嘩して、キレたら容赦なく殴り付けてくる。

まさにとって暴力はただの怒りのあらわれ。
優しいキスじゃないと愛をわかりあえないわたしたちは






「あぁ、やっぱりあたしたちはシドにもナンシーにもなれないね」
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