なまえの準備を待ってから近所のビデオ屋に向かう途中、ふと道端に黒猫の死骸を見つけた。
周りには銀蠅や黒蟻が集ってる。
なまえも気づいたみたいで眉間にシワを寄せていた。
死骸の首には何も付けられていない。見た目からして多分まだ年寄りではない野良の猫。
「仲間が死んだらさ」
「ん」
「お葬式あげる生き物って人間と象だけらしいよ」
「ほうか」
「うん、それだけでえらい人が象はすごい頭の良い子だって言ってたの」
「良いんやないのか?」
まぁそうなんだけど、と小さく地面を蹴る。
「あたしがもし死んだらさ、仁王の隣のお墓に入りたいな」
本気かと聞けばうん、と頷いた。
「じゃあ俺は灰をお前のとこに撒いてもらうかの」
「ナンシーのお母さんは許してくれなかったみたいだよ」
「俺らは両親公認やき、大丈夫じゃろ」
手を繋げばそうかな、そうだねと独り言を言ってた。砂埃が舞うこの季節になまえの喉元は妙に白く色づいていた。なんだか噛みつきたい衝動に駆られたがさっきの猫を思い出して、やめた。