とっぷりと日も暮れ、窓の向こうは外灯が点々と並んでいるのが見える。
部室から飛び出るように外に出れば日も落ちて冷たくなった空気がつん、と鼻の奥を刺激した。
部室を出てすぐに建っている時計に目をやれば短針が7を指していて一気に背筋が凍った。
早歩きからスピードを上げていつも部活のとき走る速さで校門に向かう。
途中で丸井先輩とジャッカル先輩にすれ違ったけど無視無視。
だって校門には俺の可愛い彼女が待ってるんだから。
「せんぱいっ!」
叫ぶように呼べば、校門の前でぽつんとそこに立っていた先輩は、いじっていた携帯を閉じてからあかや、と柔らかなアルトで俺の名前をなぞった。
「待たせてゴメン!寒かったしょ!」
駆け寄って手を奪うようにつかむと先輩は「全然」と笑った。でも手は余りにも冷たくて俺は情けなさとか、申し訳なさに少し涙が出そうになった。
しょんぼりと肩を落としているのを見越してか先輩は「じゃあ帰ろ!」とこれまた満点の笑顔で言った。
駅までの道のり、俺らは沢山のことを話す。今日あったこととか、昨日のテレビの話とか。
そのとき俺は彼女を車道側を歩かないように注意している。だって先輩危なっかしいし。この前なんか何もないところで盛大にすっころんでたしな。
「もう秋だねぇ」
「あ゛ーそろそろテストっすね」
「ふふ、赤也、精市が英語できるのかい?って心配してたよ?」
「…それ心配じゃなくて脅しっすよ」
「赤也が心配なんだよ」
「えーそれなら先輩に寝る間もないくらい心配して欲しいッス」
少し大きめの制服から覗いている先輩の小さな手を握るとビクッ、と震えた。
「先輩?」
「ご、ごめん!」
先輩を見ると暗闇でもわかるくらい真っ赤だった。一瞬、手繋ぐのが恥ずかしいのかと思ったけど、デートするときは毎回握ってるからそれはない。
「先輩?大丈夫?俺なんかした!?」
「や、ちがっ!赤也がっ、」
必死に首を横にふって否定する。そして落ち着いたところで何か言ったけどあんまりにも小さくて聞こえない。何?と聞き返すと更に俯いてぼそりと一言
「そんな、嬉しいこと言うから…」
先輩のほっぺが更に真っ赤になるのがわかる。
てか嬉しいことって…俺の方が何倍も嬉しいっての。
あーもう
「先輩可愛い」
年上のくせになんなの、こんなに可愛いって犯罪だよ。
「ね、ね、先輩ちゅーしていい?」
「や、ばか、こんなとこじゃやだよ…!」
「えーじゃあ違うとこならいいの?」
「まぁ…外以外なら…」
「じゃあ今日おれんち誰もいないんで家来てよ!」
え、と先輩。
だってこんなおいしいチャンス逃すわけないしょ!
「早く行きますよ!先輩!」
「赤也のばかぁー!」
夏樹様へ。
(20100401)