一歩歩くたびにそこが泥沼だったかのような錯覚。 ずぷり、ずぷりと音をたてて自分を引き込んでいく。 戻ろうとふりむいても 「もう遅いよ」 「あ、におーくんおはよー」 目を開けると隣には裸の女が一匹。 …こいつ誰だっけ? 「きのーは楽しかったよー あ、あたしもう帰るからまた遊んでねー」 頬にキスをしてからさっさと女は玄関に向かう。 昨日は違う大学のやつらと合コンして帰りに一人家に連れ込んだんだっけ。 あーところどころ記憶ない。 ちょっと飲みすぎたかもしれん。 「そーだ!ピアス忘れてた!におーくんちょっとそこにあんのとってー!」 「…ん」 ありがと、と笑った女の肩から少し赤い髪の毛がサラ、と降りた。 「あ」 「ん、どしたの?」 そうだ、だから家に連れ込んだんだ 「あっ、ちょっ…と、におーく…!」 「もっかい…いーじゃろ?」 ベッドにもう一度引きずられて困惑してる女に にこ、と微笑みかければ女はちょっとだけ頬を赤くして首に腕をからませてきた。 「なまえ、ちゃん…」 (瞳の裏に君を映して) |