夢 | ナノ


テストも終わり無事夏休み。

空いた時間を活用しようとして居酒屋のバイトを始めた。
初めてだから戸惑うことが沢山あったけれども回を重ねるごとにそれも慣れてきて今では一人でオーダーを取ることができるようになった。
始めて一ヶ月半、店長にお前すごいなと褒められた。地味に嬉しい。



「それでね、俺この日休みなんけどどっか行かない?」


夏休みも残り半月もないくらいになったとき、あたしの家に誰もいないということで幸村が部活の後に遊びに来た。
彼からはほんのり制汗剤の匂いがする。

幸村があたしの前に出してきたのは部活の予定表。
こんなの、大学でも配布してるんだねと言うと
「柳が俺たち用に作ってくれたんだ」と言った。
さすがマスター(だっけ?)、良い仕事ぶりだ。

「ん、この日バイトないから大丈夫」

「ホント?そしたら少し遠くに行かない?…泊まりでも良いけど」


少しいじわるっぽく笑うその表情に胸が少し高鳴った。
いつもは女の子みたいに綺麗な顔してるのに
こういうときだけ急に男の子の顔するんだもん。
ちょっぴり、ずるい。


「や…お、お泊まりは親許してくれないから…」


少し口ごもりなら言うと幸村は知ってるよ、と言ってあたしとの距離を一気に詰めた。
あ、と思った瞬間にはあたしの顎が人差指で軽く持ち上げられ、キスをされた。

ちゅ、ちゅ、と軽くバードキス。
息を吸おうと少し離れると後頭部を抑えられ、もう一度あたしとの距離が埋まった。

今度は優しくない激しいキス。
舌を激しく、やらしく絡めてきたと思ったら唇をぺろりと子犬のように舐める。
そしてもう一度舌で口内を荒らす。
歯列をなぞり、舌を絡め、唇に噛みつく。

そして頬にいき、首筋にキスを一つ。


「ゆ、きむら?」


気づいたらあたしの視界には幸村のドアップと向こうにはテラテラと光る蛍光灯。


「好きだよ。」


あたしも、という言葉は首筋にカプリと噛みつくその快感に流されてしまった。