夢 | ナノ



「急に会いたくなったんだ」


幸村はそう言ってあたしの家の前までアポなしでやってきた。



お風呂から出てくると同時に机の上の携帯が震えてサブディスプレイを見ると彼の名前が表示されていた。あたしは秒で携帯を開く。柔らかなアルトで「会いたくなった。」心臓が、破裂するかと思った。高校のカーディガンを羽織って外に出ると彼によく似合ったラフな格好で幸村はそこにいた。あたしを確認するとやぁ、と小さく手をふった。



「びっくりした?」

「…もち」



嬉しい、と笑ってあたしの髪の毛を撫でる。

「お風呂上がりだ」

「あ、うん。丁度あがったとこ」

「寒くない?ゴメンね、いきなり」

「や、むしろ…嬉しい」


もう二、三撫でてから抱きしめられる。
ふわふわの幸村の匂いがいっぱいに溜まる。多分今あたしの肺はピンク色。乙女色だ。


「なまえ、」

あ、と思った瞬間キスをされた。ゆっくり優しく何度か角度を変えて段々ずれていって頬に。頬、目尻、鼻先、もう一度唇。

満足したところで離れる。幸村を見ると満足そうな顔。


「ん、そろそろ帰るね、会えて嬉しかった。」


ポン、と頭を撫でてからじゃあまた明日、と帰って行った。

さっき、曲がり角で銀が見えたのは、気のせいだと思う。