夢 | ナノ


大学に入学して一ヶ月
まだまだ慣れないことが沢山あるけれども、新しい友達もできたし、幸村とも順調で、それなりに充実した日々を送っている。

でも最近友達と遊んでも、幸村とデートしていても、大事な日々にポッカリと穴が空いてような錯覚に陥る。



「俺は部活行くけどなまえはどうする?」

「そしたら適当な時間になったら迎えに行くよ。」

「わかった、そしたらあとでね。」



年期の入ったそのラケットバックを肩にかけてそのままコートに向かって行った。あたしは今日出された課題を終わらせようと図書室に向かう。

課題は数学で、一年のときにしかないと言ってもしっかり取り組まないと留年してしまう。すっごく嫌だけれども仕方ない。とりあえず机に向かう。問題は最初だからと復習程度に出されたものなので結構スラスラ解けていく。しかし終盤に差し掛かると応用問題が出題された。
まぁ、時間はかかるが解けないわけではない。丁寧に解いていく。そしてラスト一問、と言うところであたしは教授に文句を言いに行きたくなった。最大の敵、二次関数が出たのだ。


「…」


何回見てもまったくわからない。え、何故曲線動いたし。

とりあえずノートを開くとそこはほぼ真っ白で高校時代ちゃんとしとけば良かったと後悔しつつもう1ページめくる。



”よだれ垂れそうだったよ”


”借りたお礼に板書しといたからがんばれ。”




男子とは思えないほど繊細で丁寧な字。細かく書かれた解説。

胸の奥がじんわりと熱くなる。そして同時に空っぽの穴が更に空く感じがした。






寂しいよ。