「に、にお…?」 な、なんであたし仁王と寝てるの?辺りを見渡してみると窓からはなんとなく見覚えのある風景。 ってことはココは仁王の部屋…? 若い男女が同じベッドで一夜を共にした、としたら考えられるのは一つだけ。 多分あたし仁王とやらかした…………? ……………いやいやいやあり得ないあり得ないいいいいやでもあのその …ととととりあえず深呼吸。ヒッヒッフー。ってこれラマーズ法じゃん! 少しだけ落ちついたところでよくよく見てみれば知らない服着てる。 指先まで隠れてしまう大きめなロンT。 恐る恐る下を見てみるとまたしてもあたしのじゃない。立海指定ジャージ。 ……やらかしてないとしても下着姿は完ぺきみられたなコレ……。 「ん…………」 ようやく問題の張本人が目を覚ました。 深く息を吐いてからあたしのほうを向いて掠れた声でおはよう、と言った。 …なんでそんなに落ちついているんだ。 「に、にお……あの…」 自分でも情けない声を出したと思ってる。 でも自覚してる以上に脳はパニック状態でうまく口がまわらない。 とりあえず出てくる単語を紡いで言葉にする。 でも仁王は意味がわからないというような顔をしてるし、あたしの必死の言葉は舌の上で溶けてしまった。 一瞬の静寂の後仁王がゆっくりと身体を起こすとあたしの身体は反射的に跳ねた。 心臓がばっくんばっくん煩い。恥ずかしくてそっぽを向くと、その様子を見て仁王が喉の奥で馬鹿にするように笑う。 におうのくせになまいきだぞ…! 「何よ…。」 「んー、なまえちゃんかわえぇ」 そのまま仁王に頭を撫でられる。なんか仁王に、ってのが癪で足を蹴ってやる。 あ、なんか落ちついてきた。 「あのさ、とりあえず状況がつかめないんだけど…。」 きょとん、とした顔をして「昨日のこと覚えてないんか?」と言われた。 昨日?昨日は遭難事件のあとまっすぐ帰ったはずだ。 もうなんか疲れてたからあんまり覚えてないんだけど。 「覚えてないよ……そのまま家に帰ったんじゃないの?」 「えー……本気で覚えてないんか?なまえちゃんあのまま電車の中で寝ちゃって起きないから俺が家まで運んだんじゃよ。」 「絶対ありえない。」 「否定するの早いのぉ」 そりゃ、そうだ。仁王の前でそんな失態を犯したなんて信じたくない。 …それよりさ、 「この服…」 「ん?それ俺の。」 「いや、それはわかるよ。あのさ、あんたが着せたの?」 睨むように見つめると「それはありえない!」と顔を真っ赤にして否定した。 そしてすぐに「なまえちゃんが寝ぼけたまま着替えたんじゃよ」と聞いてあたしは心の底から安堵した。 この流れで行くとあたしと仁王はやらかしてないな、そう思ったらなんだかお腹も空いてきた。 「はーぁ…じゃああたしもう帰るよ。なんかゴメン。」 「んーん!お泊りみたいで楽しかった!あ、ご飯食べてきんしゃい。」 今日家族誰もいないから寂しいんじゃ! そう言う仁王の言葉に甘えてあたしはそのまま朝食をごちそうになった。 レトルトのお味噌汁が、妙においしかった。 |