夢 | ナノ





「新年も明けたね。それじゃ、行こっか。」


 2010年が明けた。

あたしたちは軽く新年の挨拶を交わし、幸村の言葉を合図に賽銭箱を目指して歩き始めた。ここから賽銭箱までは一本道。普段なら5分ぐらいで着きそうな道も、この人数だ。規制がかかって20分たってもまだ着かない。それに狭い。テニス部の固まりの中で一番はじっこにいたあたしは沢山の人とぶつかって足元がフラついた。




「なー幸村ーお前の力でなんとかなんねぇの?俺飽きてきたー」

「そうっスよぶちょー神の子の力使ってくださいよー」

「君らは俺を化け物かなんかと勘違いしてないかい?」

「じょ、冗談ッスよ-!!」



うん。なんか幸村から発せられるオーラが重いぞ。

幸村がそっと切原くんの肩に手を置くと瞬間、彼の顔は真っ青になり、丸井の方に視線を向けるとガムが大きな音を立てて破裂した。そして弦一郎と桑原くんの顔色も一瞬にして青ざめる。
なんだこの連鎖。


まぁそんなことをやっている内にようやく目的地に着いた。

 門をくぐる前に「二列になってください」と看板が見えたので素直に二列に並ぶ。勿論あたしの横は幸村だ。そして後ろには切原くんと丸井。弦一郎、柳。仁王、柳生。そして最後が桑原くん。桑原くんの隣には知らない子が並んでいた。


「お、おい赤也。俺ら挟まれたぞ。」

「やっべぇー!!刺されたらどうしよう!」

「赤也、聞こえているぞ。」

「ゲッ、柳先輩!」


またしても冗談ッスよ-!!と切原くん。君は少し学習したまえよ。


 賽銭箱の前まで来るとあたしたちは囲むように一列になって賽銭を投げ始めた。投げる前に弦一郎が切原くんに五円玉を渡しているとこを見てみんな密かに笑っていた。幸村は「おいオッサン」と言ってたけど。

 思えば、今年はいろんな事が変化した年だった気がする。
まず、仁王に出会った。最初は取っつきにくいやつだと思ってたのに話してみれば案外面白いやつだし、へたれだし。あたしの笑う回数が増えた気がする。テニス部の人たちとも友達になった。まだあんまり話してないけど、挨拶程度はするようになった。

そして、幸村と出会った。




今年はどんな年になるかな。
とにかく、良い年になればいいな。


手を二回叩いて「今年も良い年でありますように」と祈った。



A HAPPY NEW YEAR!




(20100101)