夢 | ナノ





 あのままあたしたちは一言も交わさず1日を過ごし、そして3日がたった。その間、仁王は授業中突っ伏しているかサボるかのどちらかで、目も合わせなかった。
何度か話しかけようか迷ったんだけど、もうなんか…オーラが。怒ってますって言ってて話しかけるに話しかけられなかった。(腹立ったのもあるけど。)

そんなんでやってきたクリスマスイブ。丸井が何時もの倍のお菓子持ってきてるところを見ると今日がテニス部のクリスマスパーティーなんだな、と思った。

「わ、丸井君すごいお菓子ー!」

「あたしの分もあげるよ丸井君ー」


瞬く間に丸井の周りにはギャルっちぃ子が群がった。まつげバサバサ、唇はてかてか。そんな子たちにちやほやされて丸井も満更じゃなさそうな顔してる。

一方仁王の方は、いつもならベタベタしてくるD組の佐田さんグループも、近頃の仁王の不機嫌さを感じてか、2日ほど見ていない。いっつもきゃんきゃん煩かったから嬉しいけどね。


 三時間目も仁王はサボった。三時間目は古典だった。おじいちゃん先生、谷田の授業は眠い。辺りを見渡せば何人かの生徒がお陀仏してる。気持ちよさそうに寝ているクラスメートを見てたらあたしも眠くなって、板書していた手を止めて顔を伏せた。すぐにふわふわした眠気があたしを包んだが、ポケットの中で携帯が振動したのに気づいてすぐに顔を上げる。ポケットの中からそれを取り出すとディスプレイには「未読メール一件:幸村」と表示されていた。メールボックスを開くとそこには「今日暇かな?」と一言だけ書かれていたのを見て、少し戸惑った。

幸村からのお誘いなんて初めてだから恥ずかしい。

あたしはちょっとの間悶えてから光の速さで「暇だよ」と返した。するとすぐに「じゃあ今日部活の後一緒に帰ろう」と返ってきた。

そのメールだけであたしの涙腺は崩壊寸前。だって嬉しいんだもん。

あたしって意外と乙女だなぁ。