「うぉーす、仁王…ってどうしたんだそれ?」 「丸井…」 真っ赤に腫れた頬を見て困ったような顔をする丸井。 どうしたもこうしたもない。あのまま無視を続けていたらなまえちゃんにビンタ一発喰らわされた。それがまた真田に殴られたような衝撃。音も響いたし、よろけて後ろの壁にもたれた。その強さにちょっと泣きそうになった。殴った後、なまえちゃんはそのまま走っていった。気がつくと一人残された俺は、痛いし寒いし遅刻するし虚しいしでもう最悪だった。今でも良い気分はせんが。でも俺はなんも悪くない。全部なまえちゃんが悪いんじゃもん。 「そういえばさー、今日あいつも遅刻してきたんだよな。」 あいつ、と親指で友達と談笑しているなまえちゃんを指した。 「仁王も遅刻するからさ、二人で駆け落ちしたのかなって言ってたけどそうでもなかったんだな。」 今度は無邪気そうに笑った。というか駆け落ちって。どういう関係だと思われとるんじゃ。 「そんなんありえんし」 「まぁ冗談だからさ。」 丸井の目の前に広がるお菓子。個装紙に包まれたチョコレートを一つ摘んで食べたら逆のほっぺをビンタされた。 「っ〜!!!」 「俺のエネルギー源勝手に取んな!」 こんだけあるんだからいいじゃろ!そんなこと言っても無駄だから黙っとくけ!ど!腹立つ!これだから一部のやつにブタって呼ばれるんじゃ!ばか! 「もーいい。サボる。」 教室を出て行く途中、後ろから丸井の焦ったような声が聞こえたけど無視。 今日は本当にムカムカする。それもこれも全部なまえちゃんのせいじゃ。 |