夜、仁王からメールがきていた。仁王からメールなんてめずらしいな、と思いながら見てみたらクリスマステニ部で遊ばないかという内容だった。去年だったらすぐにOKしてるだろうけど(マチは忍足くんといるから)、今年は幸村がいるから、少し、迷った。 一時間程迷った結果、あたしはメールを返さなかった。 朝になって登校してると、いつものところに仁王はいた。今日は火曜日だから朝練があるはずなのに。 「…おはよ」 「…ん」 …なんだこいつ。明らかにテンションが低いと言うか、機嫌が悪いように見える。いつもだったらなまえちゃん!って言って引っ付いてくるのに。え、何。なんか悪いものでも食べたかちょっと心配になった。めんどくさいから放置しておくけど。 そのまま黙って歩いてると風がひゅうひゅう鳴っているのに気づく。なんだか頬が一層冷えたように感じて指定のマフラーに顔をうずめた。 目線だけ仁王の方を見ると仁王はやっぱり仏教面のままで。いつもとは違う表情に戸惑いを感じた。 「仁王」 いつもと変わらない声を出したはずなのに、乾いた空気に乗せたのは、白息に溶けそうなくらい小さな声だった。 「…なん」 今度はきちんと仁王の方を見る。でも仁王はあたしを見ていなかった。真っ直ぐ向こうを見てる。人と話をするとき目を見て話せ。イライラする。 「なんで機嫌悪いの。」 足を止めると一拍遅れて仁王も足を止めた。向き合うようにしていると、彼の少しだけ開いた口から吐かれた白息が、彼の髪の色とよく似ているのに気づいた。 「なんで答えないの」 「…」 ちょっとだけ強く、ねぇ。と言っても、静かに息を吐くだけで何も答えなかった。そしてそこには見たこともないくらい冷たい表情をした仁王がいた。 冷めたような、その視線はあたしを揺さぶり、細い糸をぶつりと切った。千切れるくらい痛かった耳は、沸騰したように熱くなった。 「なんで!?なんで何も言わないの!?」 叫んだ声はわんわんと響き、止んだと思ったら、遠くで学校のチャイムが鳴る音が聞こえた。 |