夢 | ナノ


幸村と付き合い始めて二週間がたった。普通のカップルだったらもう手を繋いだりキスしたり、あわよくばちょめちょめなんかしているんだろう。でもあたしたちの間に進展と言う文字は元から無いような感じだ。

まず付き合って3日間はお互いのメールアドレスを知らなかった。知っても「登録よろしく」のメール以外してない。未だに朝は(会ったときはだけど)仁王と登校してるし、お昼も仁王と食べてる。廊下ですれ違っても幸村が優しく微笑むだけ。





どーなのこれ。





「んでね、あたしたち付き合ってるかちょっと不安なんだよね。」

「いや、待って。」

「何、マチ。」

「あたしあんたと幸村くんが付き合い始めたの初耳。」


うん、誰にも言ってなかったもんな。



この子はあたしの幼なじみ兼親友のマチ。
時々遊んだりするけど、学校も違うし、家が隣だということもあってわざわざメールとか電話はしない。生まれてからずっと一緒だったらそんなもんか。


「うーんまぁ、そんなもんなんじゃない?」

「えーあたしもっとピンク色想像してた。」

「だってあんたベタベタしてくるタイプ嫌いでしょ。」


まぁそうだけどさ。
残りのアップルパイを口に入れるとふんわり甘い味が広がった。


「あーぁ、なんであんたなんだろ。幸村君って氷帝でも人気なんだよー。知らなかったとか死刑だわ!」

「えー、だって興味なかったんだもん…しかも幸村って入院してたんでしょ?」



だからってさぁ、とため息をつきながらマチも残りのアップルパイを口に放った。



「まぁ兎に角幸村くんとお幸せにね。あたしもこれから侑士と遊ぶから。」

「ん、わかった。」



お店を出てすぐにあたしたちは別れた。ばいばいって言うときのマチは少しだけ口元が緩んでいて、あぁ、幸せなんだな、とわかった。ちょっとだけ、羨ましいな。

かしゃん

ポケットから携帯を取り出そうとしたらそのまま落としてしまった。落ちたとき、音が響いた。今自分が一人なのを思い出す。マチといたときは気がつかなかったけど、今日は冷えるなぁ。

冷たい。











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仁王連載なのに仁王が活躍してなくてすみません。