夢 | ナノ





結局幸村とあたしは帰りのHRまでそのまま保健室にいた。先生が戻ってこなくて良かった。ベッドに男女が二人。真っ先に指導室行きだろう。それが怖くて一回だけ幸村に帰ろうと言ったら「大丈夫、絶対に誰も来ないから。」と言われた。なんだか幸村がそう言ったら本当に大丈夫のような気がした。

HRが終わるとドアの向こうからは生徒の声や足音が聞こえてきて心臓が速く鳴りはじめる。保健室の先生は会議でいないから今日は掃除はない。でもケガした人とかが来たら?見回りの先生が来たら?

「…そろそろ、戻らなくちゃね。」

「うん、そうだね。俺も部活行きたいし」

繋いでいた手を離してお互いに靴を履き始める。繋いでいた手はしっとり汗ばんでいたけど不思議と嫌じゃなかった。なんていうか、恥ずかしい。

「なまえ」

呼ばれて振り返ると幸村の顔がすぐそばにあって次の瞬間には視界は真っ暗になっていた。唇が熱かったらキスされたとすぐに理解する。

(とろけそー…)

じんわりと胸が熱くなって、それから頭がぴりぴりと溶けていく感じがする。幸せってこんな感じなんだと再認識。

「なまえ、好きだよ。」

このまま溶かされたい。幸村にだったら殺されても良い。柄じゃないことを思ってしまうくらいあたしは幸村のこと、好きになってる。