幸村があたしの頭を撫でてから帰ったあとすぐ後に着替えを終えたレギュラーが出てきた。 仁王は、と探すとまだ奥でネクタイと格闘しているのが見えてなんかどっと力が抜けた。 「におーまだー?」 「あ、なまえちゃんっ、ネクタイ結んで!」 部室のドアを蹴って呼ぶとものっそい輝いた目でこちらを向かれた。あと弦一郎に怒られた。 仁王も弦一郎もほっとくけどね。めんどくさいもん。 「ケチ」 「なまえ!たる「うっせ禿げ。帰るぞ。」 「禿げじゃないきに!っていうか帰っちゃいやじゃああああ」 「はいはい待っててあげるから黙れ」 ぺちんっ 「頭はたいたー!」 うっせええええ!!!!!!! 隅っこで泣いてる弦一郎もうっせええええ!!!お前のこと言ってないし!! 「ああもうばいばい!」 隅っこで泣いてる弦一郎と慰めてるふりしてからかってる柳(仲良くなった)にばいばいを言って学校を出る。 まだ七時回ってないのに辺りはもう真っ暗だ。 視線を落とすと自分の手や足が蛍光灯に照らされて青白く発光してるみたいに見えた。 その青白さにさっきのことを思い出す。 明かりに照らされた彼の手は真っ白だった。でもそんなのとは関係なしに彼も男の子だ。 鍛え上げられた腕は細いながらもがっしりとした重たそうな筋肉がついていて手の甲は血管が浮いていた。 喉仏なんて突出しているのが光と影によってはっきりとわかった。 頭に置かれた手の平は大きく温かった。 ぼんやりと思い出していたらふいに仁王が立ち止まって一点を凝視しだした。 「あれ?あれ幸村じゃないかのお」 「え?」 どきん。 心臓が一回大きく跳ねたのがわかった。 いやいやいや落ちつけ自分。 「んーあいつ彼女いたかのお」 仁王が指さす先には公園のベンチに腰を落とす幸村と一回り小さな女の子がいた。 後ろ姿だったけど特徴のあるラケットバッグにゆるいウェーブのかかった髪の毛で幸村ってわかる。 「んふふー参謀も男じゃったんじゃなー秋なのに春じゃのー青いのー」 一瞬、鈍器で頭を強く殴られたのかと思った。 横でにやにやと笑いながら明日は赤飯じゃのーとか言う仁王の声が頭に入らない。 聞こえているのに頭に入らない。 「なまえちゃんっ、そろそろ行こっ!」 足元が、おぼつかない。 |