幸村が爆弾を落とした直後、10kmランニングを終えた仁王があたしを見つけていつものように「なまえちゃん」と笑顔で近寄ってきた。 でもあたしの耳に仁王の声は全然入ってこなくて不安に思った仁王があたしの肩を揺らして初めて仁王が来たことに気がついた。 「なまえちゃん大丈夫?具合悪い?」 銀の細い眉がハの字になる。まるで一人ぼっちにされた犬だ。 「ん、あー…大丈夫。ちょっと考え事してた。」 安心したようにふにゃ、と笑う。そして「なまえちゃんにかっこいいところ見せちゃるきに!」とはりきってコートの中に入った。 丸井と打ってるのを見てたはずなのに幸村の言葉が頭からこびりついて離れなくって寒さも忘れてただそこに座っていた。 部活が終わって携帯を弄りながら仁王を待つ。寒くてうまく指が動かせない。 仁王も遅いしうまく指も動かなくてイライラしていたらドアノブを捻る音が聞こえたのでそちら向くと出てきたのは幸村だった。 あたしを見つけてまた優しく微笑む。 「仁王ならシャツのボタンと悪戦苦闘してたよ。」 幸村は静かにドアを閉めてそう言った。 そういえばあいつの着替えは長かったんだった。そっか、と答えて視線は幸村から離せないまま弄っていた携帯を閉じる。 「ゆき「あ、さっきのことなら」 本心だよ。そう言って部室のドアにもたれかかった。 逆光で表情はよく見えなかったけどやっぱり優しく笑っているんだろう。 何を言っていいのかわかず黙っていると後ろで笑い声や弦一郎の怒声が聞こえてあたしたちの間に流れる沈黙との対比に背中に嫌な汗が流れるのがわかった。 「仁王ーそろそろ行くぞー」 丸井の声が聞こえてびくりと肩が上がる。 それを見て幸村はぷっ、と噴き出すように笑った。 「ふふ、それじゃ本当に行こうかな。赤也とか仁王が煩いと思うし。」 「え、あ、ああ。うん。それじゃ。」 「うん、それじゃまたね。」 あたしの横を通りすぎて、あ、と何かを思い出したようにこちらを振り返った。 「今は保留にしといてあげるけど一週間以内にお前を堕とすから。」 …爆弾、二つ目投下されました。 |