夢 | ナノ






まだ、と言うべきかもう、と言うべきか。十月に入ってからがくんと気温が下がってきた。今年の夏は大して暑くなかったから尚更か。
木枯らしが枯れ葉をぐいぐい押し上げてゆく。こういうときスカートがめくれないから立海の制服はワンピース仕様で良かったと思う。
きつめに巻いたマフラーに顔をうずめて息を吐く。あぁ、寒い。風にむき出しの膝小僧をなで上げられると冷たさでぞわぞわとする。太ももを触ると冷たさでまだ覚醒しきっていない頭が少しすっきりした。
学校まであと15分。寒さから少しでも逃れたくて何も感じないように無心で歩く。
あと10分、角を曲がると誰かが電柱に寄りかかっているのが見えた。

「なまえちゃん」

脱色しまくった銀の尻尾が揺れたのが見えた。

「…おはよ」

「なんじゃその間は。」

「いや、ココで会うと思わなかった、っていうか朝練なかったの?」

うん、と短く答えて歩きだす。寒さでろくに口が回らないからあたしたちは無言で歩いた。
時折仁王が手をこすりあわせたりマフラーを直したりしてた。あともう少しで学校が見えるってとこで左手が凍った。
びっくりして視線を落とすと氷はところどころあかぎれた仁王の手だった。

「びっ…、くりした…」

「なまえちゃんもつべたい。」

じゃあ離せよ、と言っても仁王はへらへら笑うだけだった。

学校に着いて仁王から手をもぎ取るように離すとすぅ、と掌が冷えた。