今日の会議も終わり、私は自分の部屋に戻った。未来機関には各部屋が用意されており、"超高校級の"衣食住が用意されている。言うなれば"超高校級の"ホテル、だろうか。
部屋に備え付けられている机に向かい、思い浮かんだデザインを次々と書き込む。響子さんが島の皆に何階がいいか、というのを聞いてくれたので、もうすでに彼らのフロアは決まっているも同然だ。私もそこに住むので、自分のフロアをどこにするかワクワクしていた。
「さて、」と言いながら響子さんにもらったメモを広げた途端、パズルを解くような楽しみが胸に込み上げる。皆のリクエストをはめ込んでいくなんて、本当のパズルだ。
皆のリクエストはこうだ。
男子たちは、
日向くんは「俺はどこでもいいぞ」
花村くんは「ンフフ、ぼくはレストランや厨房に近いのがいいね!」
九頭龍くんは「オレは高い方が好きだ」
左右田くんは「低い所だな」
田中くんは「天界より魔界に近い下の階層が魔獣達にもよかろうな」
豚神くんは「俺はどこでも構わんが、体型的にも下の方がいいかもしれん」
弐大くんは「ワシはどこでも構わんぞ!!」
皆、上か下かの極端だ。パズルがどんどん難しくなっていく。
そして、女子たちは、
蜜柑ちゃんは「皆さんの非常事態にはすぐ対応できるように、皆さんの中間の階がいいですねぇ」
終里ちゃんは「オレはどこでもいいぜ。あ、でも、飯が近い方がいいなぁ」
ソニアちゃんは「わたくしはどこでも構いませんよ」
ペコちゃんは「できればぼっちゃんの近くがいいが、無理ならばどこでも構わん」
澪田ちゃんは「どこでもいいっすよーっ!!」
西園寺ちゃんは「小泉おねぇと近かったらどこでもいいけどー?」
小泉ちゃんは「アタシはどこでもいいよ」
皆はどこでもいい、が多くて小さなピースが簡単にはめれそうだ。
「んー…どうしよ」
違う紙を取り出し、そこに階数と名前を書き込む。こうだろうか、こうだろうか、と試行錯誤を続けるが、うまくいかない。
そこで、ふと気付いた。あ、人数が足りないじゃないか。
響子さんにもらったメモを読み直し、見落としているものを探す。何度も読んでも誰が抜けているのか分からず、その存在がすぐにその姿を消してしまう。他のメモの内容が邪魔をしてしまうのだ。
「…あ、」
取り出した時に落としてしまったのだろうか。机の端にそれはあった。
それを手に取り、響子さんの綺麗な字を目で追う。その内に私は、体温がグンと上がるのを感じた。ああ、なんでこんなヤツを忘れていたのだろうか。皆も意図的に私の思考をジャックしていたのではないのか。
…ーー『なまえさんと一緒ならどこだって』
たったその言葉だけ。ああ、もう…バカじゃないの。
「私だって凪斗の近くにするに決まってるじゃない…!!」
私も、凪斗も、思ってることは一緒だったのだ。
緩む口元を抑えながら、私はそう呟いた。彼と一緒のことを思っていた、だなんて甘いシチュエーションが、くすぐったいと同時になんとも嬉しかった。
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