目が覚めたのはちょうど9時になった頃だった。つまり、私は寝坊…それだ。
急いで服を取り出し、袖を通す。久し振りの匂いだ。なんて悠長に構えている暇はない…!!
取り敢えずお気に入りのバーカーを羽織り、コテージを飛び出した。

息も切れ切れでレストランに辿り着く。定位置には凪斗と日向くんが談笑していた。


「…おはよ…」


ハァハァと酸素を欲する肺。ちくしょう、体力がなくなっている。私は息を整えながら、凪斗の隣にどかっと座った。


「おはよう。遅かったね、なまえさん」

「おはよう。心配してたんだぞ」


ハハッと爽やかに笑う日向くん。彼を見ていると、昨日の事なんて夢だったんじゃないか、と疑ってしまう。


「あれ、苗木くん達は?」


この場にいない彼らを見つける事は出来ず、その疑問を口にする。それには凪斗が答えてくれた。


「本部に戻ったんだ。苗木クンと霧切さんと十神クンはカタを付けるんだって。苗木クンが『ちょっと学級裁判みたいなの殺ってくるね!』って良い笑顔で船に乗って行った時は、苗木クンに黒い希望が見えたよ」

「あの笑みは若干怖かったぞ」


殺って、の字が違うのでは。本当に苗木くんはつくづく本部を舐めているらしい。
でも、苗木くんと響子さん、十神くんがそれに参加するなら、本部に"超高校級の弁護士"らへんがいない限りは勝てるだろう。なんてったって、希望と探偵と噛ませメガネだもの。


「他の未来機関の皆は?」

「それも本部。しばらくは向こうでのんびりするらしい」


話的に、苗木くん達は持ってくるが、葉隠くん達は帰ってこないらしい。平和と言えば平和だ。苗木くん達は明後日くらいには帰ってくる、とのこと。


「…堂城さんは…?」


彼の名前を出した途端、その場の空気が若干凍った。触れてはいけなかったか、と自分を責めていると日向くんが「堂城さんはな」と説明してくれた。


「苗木達が連れていったんだ。やっぱり一番の証拠だからな」


…そっか。そう小さく呟く。
学級裁判でもモノクマファイルは役に立っていたらしいから、この件でもそれが実物として繰り広げされるのだろう。


「…辛い状況のはずなのに…皆は強いね」


レストランで食事を作ってくれる花村くんや、怪我をしても大丈夫なように、ロビーで救急箱を片手に本を読む蜜柑ちゃん。皆、自分にできる事をやっていた。
ソニアちゃんはいつでも外に出てもいいように、今の世界を学ぼうと頑張っている。その隣では田中くんが動物に良い環境づくりに情熱を注いでいた。

…ーー皆、未来に向けて生きているのだ。


「…またその話?大丈夫だよ。なまえさんは強いよ」

「ああ。俺たちはみょうじを信じてるからな」


悩み事だったら、また気が向いたら話してくれ。
そんな優しい言葉にまた目頭が熱くなった。彼らは私の事を真摯になって聞いてくれる。そんな気がした。

…また、苗木くん達が帰ってきたら言おう。
希望に向けて、未来に向けて歩き出す皆に、遅れを取らないように。悩むのももう飽きた。もう大丈夫だ。


明日、明後日…苗木くん達が行ってから、日にちを指折り数えた頃、苗木くん達は帰ってきた。

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