*グロい表現があります。苦手な方は戻るを押して、この話を飛ばす事をオススメします。
堂城さんを正面よりの斜めで見ていた私は、その光景を目の当たりにしていた。


眉間から噴き出す鮮血。そして若干の血肉。
貫通はしていないようだが、気分を悪くさせるには十分だった。目を見開く堂城さん。それも束の間、彼は一気に倒れこんだ。


ふとレストランの外を見ると、一機のヘリが上空を飛んでいた。
ハッと我に帰った私は、蜜柑ちゃんに救急の処置をするように頼み、叫び出す澪田ちゃんや他の皆を宥めるように、と日向くんや凪斗に指示を飛ばした。


「蜜柑ちゃんッ、堂城さんの処置をッ!!!

落ち着いてる人は落ち着いてない人を宥めてッ!!!」


そこでもう一度ヘリを確認。通信をとっているのか、その場で止まっている。これはチャンスだ。
未来機関の苗木くん、十神くん、響子さんを呼び、ヘリの方を指差す。それを把握した三人はびっくりしてこちらを見た。私は後ろからの凪斗たちの制止の声も聞かず、レストランを駆け出した。その後ろから苗木くん、十神くん、響子さんが私を追いかける。
蜜柑ちゃんに堂城さんの事を頼んだものの、彼が助からないことなんて分かり切っていた。でもそんな事を考えたくなかった。
私たちを意外な方法で、理解できない行動で救おうとしてくれた、彼には生きて欲しい。そう思った。

堂城さんは絶望が、希望が憎いんじゃない。彼の口から出る"憎い"という言葉は、彼自身が自己暗示をかけていたに過ぎない。
自分は絶望、希望を憎んでいる。殺したいくらいに憎んでいる。そう自己暗示をかけることで、自分の優しさを隠していたのだ。しかし、その優しさが彼を殺してしまったのだろう。


「堂城さんは、自己暗示に付け込まれたんだ。でも彼は悪い人じゃない。優しい人なんだ…なのに…ッ」


走りながら声を荒げていると、少し後ろを走っていた十神くんが小さく「アイツが言っていた"お方"だろうな…チッ…」と大きな舌打ちをかました。
十神くんはスピードを上げ、走っている私の腕を掴んでスピードにブレーキをかけた。「なんで止めたんですッ!!?」彼に不満をぶちまけると、十神くんはうっとおしそうに私を睨み付けた。


「おい、みょうじッ、今から言うことを聞け。
堂城は失敗すれば"殺される"事になっていた…!!今がそれだ。あのヘリは堂城に作戦を持ち掛けたヤツで間違いないだろう。本部には"超高校級のスナイパー"が存在する。そいつが依頼を頼んだのに間違いないッ」


そこで区切った十神くんの続きを、響子さんが遮った。


「…今は様子見をしたほうがいいわ。恐らく堂城さんに持ち掛けた人は、彼を元々切り捨てる気だったのでしょうね。彼を殺すことによって、日向くんたち…絶望が殺したことにしようと思っていたのよ。
だから、この後のことは私に任せて。絶対にあなた達に手出しはさせない」


力強い彼女の言葉。それをさらに押すように苗木くんが口を開いた。


「ボク達に任せて。なまえさんも、狛枝クンも、日向クンも必ず守ってみせるから」


こんなにも力強い人達がいるのだろうか。安心できる言葉があるだろうか。
安堵した私の体は急に動かなくなり、その場にへたり込んでしまった。「休憩…」その言葉に呆れた響子さんと十神くんは苦笑し、ホテルへと戻って行く。苗木くんはと言うと、彼も疲れたようで一緒に休む事にした。


「苗木くん、」

「ん?」

「私ね、思うんだよね」


「何を?」と尋ねる苗木くんに返事をする事なく、私は意識を沈めてしまった。

…ーー何を、って。それはね、




…ーー絶望も希望もやってることは同じじゃないか。




ってことだよ。

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