とりあえずボク達はウサミたちの改変作業を待つ事にした。改変作業が終われば、なまえさんの記憶が戻る。なまえさんの記憶を戻して、ジャバウォック島に帰る。そしてそいつをコテンパンにする。最高だ。
…ーーそしてプログラム最終日。
ボク達は苗木クンにジャバウォック公園へ集まるように、と言われ全員が集合していた。苗木クンの姿はまだない。
「なまえさん、大丈夫?ずいぶん眠そうだけど」
「大丈夫ですよ。少し疲れているみたいです」
なまえさんは本当に疲れているみたいだった。肌は青白いし、眠そうにあくびをしていた。時々本当に大丈夫かと思うくらい、立ちながらこっくりと寝そうになる。
「私みたいだね。私も前回はシステムのせいか、立ちながら寝るなんてしょっちゅうだったよ」
「ははっ、そうだったな」
他愛もない昔話。なまえさんはそれが大好物だ。面白そうに「いいですねぇ」と笑う。それだけでもボク達は幸せな気分になれた。
…そんな会話をしながら1時間がたった。まだ苗木クンは来ない。
「苗木クンが1時間も時間に遅れるなんて…普通じゃないよね」
「…ああ。もしかしたら何かあったのかもな…」
そんな不安がボク達を包んだ。なまえさんと七海さんは耐え切れなかったのか、やしの木の日陰で寄り添って寝ている。
「改変作業を手伝っているのかもね」
今はそういう事にしよう。そんな曖昧さでボク達はその場で待ち続ける事にした。
…ーー日が暮れてきた。
もう何時間も待たされている。なまえさん達も起きてしまうほどに。
他の皆もイライラが募っていた。「いつまで待たせるんだ」「もう終わっちゃうよー」「持つのも飽きたよ」と口々に不満をぶちまける。正直、ボクも待つのは飽きてきた。何もないここで待て、と言われてもそれが普通なのかもしれない。
「…あ、れ?」
「どうしたんだ?みょうじ」
そんな時、突然なまえさんが耳を澄ました。もしかしたら声が聞こえているのでは、と思ったボク達は一緒に耳を澄ます。
『なんだよッなんでなんでなんでッ!!?システムが直ってるんだ!!!?誰がッ』
それは堂城の声だった。確かに焦っている。
『悪かったな、それは俺がやっておいた』
十神クンの登場だ。とても声は鮮明に聞こえる。
『とがッー十神さん!!?なっ、なにを言ってー』
『いい加減にしろ。お前が"絶望の残党全員の記憶を消去、または処分"という仕事を任されている事は知っている』
『な、何を言ってるんですか…俺はそんな…』
いかにも仮面を被りきれていない声だった。十神クンはそれにイラついたようで、鼻で嗤った。
『重要な仕事を任されたものだな。成功すれば10億円の報酬、共に幹部への昇進。失敗すればー』
『黙れッッッ!!!!!!!!!!』
耳を劈く大声。それは澄まさずにも聞こえたようで、全員はボク達を真似するように耳を澄ました。
『ーまぁいい。お前の仕事は失敗に終わる。
…ーーおい、聴いてるな?なら言っておこう。犯人は、堂城和也だ。
帰ってきてからの処置はお前達に任せてやる。ああ、それとな、
3、2、1…0』
突然のカウントダウン。その数字が0になると同時に、隣にいたなまえさんが崩れ落ちた。まるで操り人形の糸がプツンと切れたようだった。
「なまえさんッ!!?」
『二回目のカウントダウンだ。5、4、3、2、1…』
0。その数字を聞く前にボク達は意識を失った。
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