元の部屋に戻ると、狛枝くんと日向くんがなにやら話していた。少し空気が悪い。張り詰めている。
「次、キミの検査ですよ。狛枝くん」
苗木くんに言われた通り、狛枝くんに次だと伝える。なのに狛枝くんは不機嫌そうに一言。
「苗木くんに話しかけられるのはとても幸運だけど、キミなんかに話しかけられるのは不運以外の何物でもないね。いや、それ以上の不運だよ。
超高校級じゃない…希望じゃないキミはおとなしく帰りなよ。それか未来機関に処分されてしまったらいいんじゃないかな。
と言うより、ボクの名前を呼ばないでくれるかな。それとボクの視界に映らないでよ。目障りに耳障りだ」
「お、おい、狛枝…言い過ぎだろ」
カチン。これは予想以上のウザさだ。
希望厨にも程がある。ウザい。ウザすぎる。そこまで言われると、逆に嫌がらせたいのが私だ。
そう言うなら、もっとイラつかせてやる。
「あー、ごめんなさいね。私は苗木くんに頼まれたんですー。むしろ狛枝くんが私を視界に映さなければいいんじゃないですかねぇ?」
にっこり。相手がイラつくように薄笑いを浮かべる。
すると私の思い通りに狛枝くんはイラついてくれた。ざまぁみろ。私の手の上で踊っとけ、バァーカ。
「うるさいなぁ…凡人のキミがボクなんかでも敬うのが礼儀だよ。それにバカはキミじゃない?
そんな簡単な事でも分からないなんて、ボクでも分かるよ。ゴミクズのボクよりもクズだなんて、おかしい話だね。
もしかしてキミ、超高校級のクズなんじゃない」
ムカつく。私の頭が爆発しそうだ…いや、爆発した。
私はどうにでもなれ、と静止の声を上げる日向くんを無視して、喧嘩に集中することにした。
ごめん、日向くん。
「超高校級のクズですか。じゃあ、私でも超高校級に成り得るんですね。じゃあ、キミが言う"希望"なわけですね」
「ははっ、そんなわけないじゃん。腐ってもキミは凡人だからね」
「凡人でいいんです。才能の無駄遣いするより省エネですから。運で死を左右するよりマシです」
「キミさぁ…黙れないワケ?」
「無理ですね。クズですから、理解できません」
「残念なアタマだね。同情するよ」
「同情してくれるんですか。嬉しいですねぇ」
「やっぱりクズだね、キミ」
「褒め言葉として受け取ります」
そこで狛枝くんが黙った。よっしゃ、勝った。と拳を握る。
その時、ガン、と頭に激痛が走った。
「いったぁ…っ!!」
「いてっ」
狛枝くんと声が重なる。それを理解した私と狛枝くんは、ハモるなよと睨み合った。
そしてまたガン、と痛みが走る。
「狛枝もさっさと苗木んトコ行ってこい。苗木、待ってるぞ」
「日向くんが言うなら仕方ないね。分かったよ」
ムカつく事に立ち上がった狛枝くんは、苗木くんがいる部屋に行くためのドアに向かった。
ドアに手をかけた時、狛枝くんはこちらを振り返った。なんだ。その綺麗な顔を見せつけているのか。ムカつく。殴りたい。
「みょうじさんさぁ、本当に残念だよね」
最後にそう言って、ドアを閉めた。ずいぶんと楽しそうに笑ってやがった。
そして時間差で私の中でプッツン、となにかが切れた。爆発。
「ムッカつくぅッッ!!!!なにアイツ、ちょっともう一回喧嘩売ってくるッッ」
「やめろ」
「いった」
ガッ、っと腕が引っ張られる。日向くんは呆れたように、ため息を吐いた。
「お前ら、なんでそんなに仲悪いんだよ」
知らないよ。向こうが勝手に嫌ったから、こっちも嫌ってやったんだ。
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