あれから25日後。このプログラムも半分になってきた頃の話。
私たちは本当に通常通り生活していた。特に何することもなく、日常を繰り返していたのだ。
そして25日目。
「…やべぇ…」
私は風邪をひいていた。
普通、"風邪"というものはプログラミングされていない。つまり、これは絶望病のようなバグやウイルスのようなもの、となる。風邪だと言えば、ウサミちゃんが慌てることだろう。そして皆が飛んでくる。ああ、ダメだ。いつも通り生活しよう。
ちなみにこのジャバウォック島から、凪斗は一緒に寝ることが無くなった。なぜかと聞いてみたが、「察して…」と言われ、今だに察していない。おいどういうことだ、説明しろ。
とりあえず日常を過ごそうと思い、体を起こす。やっぱりダルい。皆レストランだろう。レストランに行くと、「おはよう」と声をたくさんかけられる。それに一つ一つ返していき、凪斗と苗木くん、日向くん、七海ちゃんが待ってくれているテーブルに辿り着く。
「おはよう、遅かったな」
「おはよう、日向くん。ちょっと寝すぎちゃった」
椅子に座ると、ちょうど花村くんが注文を聞きに来た。こちらに来ても、花村くんは「じゃあ食事係はぼくだね」と食事係を引き受けてくれたのだ。
まだ気分が優れないから、いつもと量が少なめで、パンケーキにフルーツを乗せたヨーグルトを頼んだ。凪斗には「食い意地張ったなまえさんがそれだけだなんて…!!」とビックリされた。失礼な、これでも女子だ。
「なんとなく、みょうじさん…顔色悪い気がするけど」
「大丈夫?」と顔を覗かせるのは七海ちゃん。眠そうに目をこすって、心配そうにこちらを見ている。それに「寝すぎたからかも」と笑うと、彼女は心配そうながらも引き下がってくれた。
ーーー…
食べ終わり、いつも通り今日は何をするか、という計画に話が移った。こちらに来てから、私たちは一緒に行動し続けている。理由は簡単なことだと思う。居心地がいい。ただそれだけ。
「今日はのんびりしとかない?休みは必要だし」
七海ちゃんが提案した案に賛同して「そうだな」「そうだね」と頷く。私も頷いたが、首を縦に振るだけで頭がガンガンする。私はあまり動かないことにしよう。
「じゃあ私は部屋に戻るね」
逃げるように言うと、皆は心配そうにしながらも「じゃあまたね」と笑って手を振ってくれた。それに安心して、席を立つ。
ーー…その時だった。
頭を内側からトンカチで殴られたような痛み、背筋を駆け回る寒気、頭に流れ込むノイズ…ーーそして、暗転。
私は倒れたのだろう。意識が沈む途中、皆の悲鳴が耳に残っていた。だが、その声も段々と小さくなっていき、最後にはミュート。頭にガンガンと響き続けるノイズが私を嘲笑っているようだった。
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