威圧感を含んだその言い方になんと答えればいいか迷う。
狛枝くんは確か、希望厨だ。超高校級以外は興味なく突き放すという。
「…え、っと、ですね…」
これは嘘でも超高校級を名乗った方がいいのだろうか。
そう迷っていると、日向くんが助け舟を出してくれた。ありがたい。
「みょうじだ。事情があって、今はここにいるんだ。超高校級の…なんだっけ?」
ありがたい。そこまで振ってくれるのか、日向くん…!!
感動していると、狛枝くんは疑いの目をこちらに向けていた。
「みょうじなまえ、です。超高校級の、絵師、だったと思われます…」
「思われます、って何」
「…自分はそう思ってないので」
「ふぅーん…超高校級の絵師のみょうじさん、ねぇ…聞いたことがないな」
うっ、と詰まってしまう。
そうだった。相手は希望厨だ。希望は把握しているに決まっているじゃないか。
「みょうじさんは公表しないのがポリシーらしいから、聞いたことがないんじゃないかな?」
苗木くんもフォローに回ってくれた。ありがたい。
超高校級の希望だし、狛枝くんも信じるはず…っ!!
だが、そんな希望もヤツは論破してくれやがった。
「でもそれほど有名なら、超高校級の名前だって轟いているはずだよ」
そこを突いてはいけない。泣きそうになりながらも、自分が口を出せば面倒臭い事になるのが分かっているので、口を出さない。
「そうかもね。でも、年齢も公表してないと、超高校級なんて分からないでしょ?」
苗木くんもフォローが上手い。ありがたい。
狛枝くんに疑われたら、面倒臭いことが分かっているのだろう。
「…苗木クンが言うなら…と言いたいけど、ボクは信じないよ。嘘だね」
…無理でした。
相手はそうとう頑固のようだ。ゲームをプレイしてないけど、pix○vとかでは見たことあるから分かる。無理だ。
「なら、嘘でいいです。とりあえず、私は目が覚めたらここにいたんです」
狛枝くんを無視する、という選択肢を選ぶ。
相手も不本意のようで、視線が刺さってくるが、それも無視だ。
「それだけは信じてください」
ハッキリと言うと、観念したかのように苗木くんは頷いた。
「分かったよ。じゃあ、まずは検査を受けてもらう。みょうじさんの後に狛枝クンも受けてもらうね。
その時に話すから、今はもう終わり。狛枝クンは…検査まで日向クン、よろしくね」
「分かった。みょうじもまたな」
笑いながら、ひらひらと手を振ってくる日向くんに、少し躊躇いながらも振り返す。
日向くんがこの短時間で、すごくフレンドリーになった。…どういうことだろう。
私はケースから出ると、ドアの方で待っている苗木くんの方へ駆けた。
…トリップして来たのはいいけど、私がいた世界の方はどうなってるんだろう。
トリップ補正で「時間はたちません☆」とかなっていることを願おう。
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