私たちのチームが買い物を終えたのは、それから3時間後。その合間にはお昼ご飯を食べたり、アイスを食べたりして回っていた。


「じゃあ…どこ行こっか?」


トランクをロッカーに預け、次の自由時間。苗木くんと日向くんは本気で考えてくれているようだ。
私は悩んでいる2人を尻目に、どんな店があるのかと改めて見回す。衣服…バッグ…パワーストーン…本屋…アクセサリー…その他にも多々。
どうせなら、皆でお揃いにしたい。定番のストラップにしても、付ける場所なんてあの島にはない。文房具は消耗品だし、なくしてしまうかもしれない。私が。なら身につけるものが良いのだが、服はさすがにおかしいし、恥ずかしい。


「…アクセサリー系が安定か」


その呟きが聞こえたのか、日向くんが「アクセサリー系なら、あそこはどうだ?」と提案してくれた。日向くんが指差したのは、シルバーを中心としたおしゃれなお店で、アクセの種類も多いようだった。


「じゃあ…あそこで」

「了解だ」
「うん。分かったよ」


私のわがままにも付き合ってくれる2人に感謝しながら、店内へと足を踏み入れる。明るい店内には、その光が反射してたくさんのシルバーが光り輝いていた。
「わぁ…」と小さく感嘆する。そんな私に苗木くんが「どれでもいいよ」と背中を押してくれた。


「2人は見回ってていいよ」


そんな私の申し出に、お互いに顔を見合わせながらも、なにかあると察してくれた。「じゃあ、向かいの店にいるからな」と日向くんが言い、それに苗木くんが続く。ちなみに向かいの店には、高級そうなコーヒー豆が並んでいる。
ちなみに皆のリングのサイズなどは、響子さんにしっかり聞いて置いてある。


私はまず、店内のシルバーを見て回った。店員は普通なら「これはどうです?」などと話しかけてくるのだろうが、この希望ヶ峰デパートの店員はずっとレジに立ったままだ。おそらく、未来機関の苗木くんたちとその客人(という立場)には、必要以上に声をかけるな。と言われているのだろう。

そして次に店員に近寄り、イニシャルなど彫れるのか聞いてみた。店員は上品に「はい。できますよ」と微笑み頷いてくれた。
すぐに完成するか、と尋ねれば「入れるだけであれば、30分程度でもできます。うちの工房は一級ですから。形からであれば、1週間はかかりますが」と丁寧に答えてくれる。希望ヶ峰デパートすごい。

イニシャルを全員分入れるとして、なににしよう。全員リングなどは個性が出ないし、イニシャルだけではツマラナイ。1週間後では遅いし、それならば入れるだけでも問題ない。
センスに頼ろう、と目を瞑ってイメージを浮かべる。

まずは苗木くん。苗木くんは仕事などがあるから、支障が出ないようなものがいい。ならネックレスがいいかもしれない。リングにチェーンを通して、リングとしてもネックレスとしても使えるような形。

次に日向くん。日向くんがネックレスやリングを付けるのを想像できない。ならシンプルなブレスレットだろうか。ネクタイピンもいいかもしれない。ブレスレットにネクタイピンにもなるチャームをつけてもいい。

響子さん。彼女にも仕事があるから、苗木くんと似たような形がいいかもしれない。苗木くんのよりは少し豪華でありながら、彼女の儚くて美しい様を映えさせるような形。バラを彫刻してあっても良さそうだ。

私のイメージが着々と進んでいく。残るは堂城さん、狛枝くん、私の分。

堂城さんにはブレスレットがいい。少し幅があり、時計のように見えもする感じだ。堂城さんは仕事が出来るだろうから、そのイメージを壊さないような形がいい。

狛枝くんはブレスレットは嫌味になるかもしれない。良くてリングだ。ネックレスだと今でも凶器的な鎖骨が見えてしまう。絵を描いていた者として、鎖骨が凶器だと理解している。ならばリングだ。まぁ島から出た時のためにもチェーンも買っておこう。彼のイメージ的に幅が細い方がいいだろう。

私はなんでもいいのだが…狛枝くんをいじめるついでにお揃いにしてやろう。


「…別にやましい気持ちなんかないしっ…」


そう誰にか分からない言い訳を呟き、店員さんに頼んでいく。

…ーー苗木くん(M.N)はあのパーカーに描かれたドクロが彫られたシンプルなリング。
日向くん(H.H)は少し和が入ったブレスレットに、彼の瞳のような形をしたネクタイピン。
響子さん(K.K)はバラが彫刻されたおしゃれなネックレス。
十神くん(B.T)は宇宙をイメージした懐中時計。
腐川ちゃん(T.F)とジェノさんは(S.J)はハサミと本、という2人をイメージしたかのようなペアリング。
朝日奈ちゃん(A.A)はドーナツの可愛らしいチャームがついたブレスレット。
葉隠くん(Y.H)は水晶が埋め込んである男らしいブレスレット。
狛枝くん(N.K)は星をイメージしたシンプルなリング。
蜜柑ちゃん(M.T)は愛らしくハートを散りばめたネックレス。
西園寺ちゃん(H.S)は和風ながらも可愛らしいブレスレットに、猫のピンチャーム。
小泉ちゃん(M.K)はたくさんの花をイメージしたブローチ。
九頭龍くん(F.K)は龍が彫られたブレスレットとピアス。
ペコちゃん(P.P)は蝶々と猫をイメージしたペンダント。
終里ちゃん(A.O)は爆発と肉、というミスマッチさを醸し出すフィット感のあるブレスレット。
弐大さん(N.N)は可愛らしくも男らしい、猫が彫られたブレスレット。
花村くん(T.H)は花が添えられた料理をイメージしたネックレス。
田中くん(G.T)は魔法陣のような模様のリングとピアス。
左右田くん(K.S)は金属感の出るシンプルなブレスレット。
ソニアさん(N.S)はダイヤモンドと思われる石がはめられた、高級と一目で分かるネックレス。
豚神くん(B.T)は十神くんと似ている模様のペンダント、ネクタイピン。
澪田ちゃん(I.M)はパンクロックをイメージしたブレスレット。
堂城さん(K.D)はシンプルかつデキる男をイメージしたブレスレット。
そして私が狛枝くんとお揃い、というわけだ。

全てのシルバーにはイニシャルと同時に、"The future"と未来機関を表した文字を彫ってもらった。合計金額は目を向けれるような額ではなかったが、待っている間、苗木くんたちに伝えるとビックリしながらも「未来機関の経費だからねぇ」と笑った。
それでいいのか、未来機関。…今思えば、未来機関の経費で未来機関の店のものを買っているわけだから、関係ないのかもしれない。

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