重々しく口を開く堂城さん。その真剣な表情にその場に居る4人は息をのんだ。


「…本部が本格的に引き渡しを要求する可能性が高いです。引き渡せば、みょうじさんの生死は保証できません」

「そんな…ッ!!?」

「速急に処分するか…新世界プログラムにかけるか…選択して欲しいのです」


そこでふと疑問が思い浮かぶ。自分の話なのにそんな事で良いのか、と自分でも突っ込みたいが、私は無意識のうちに口を開いていた。


「なんで堂城さんは"絶望"かもしれない私が生きてほしい、かのようにに言うんですか?未来機関は"絶望を処分する"んじゃないんですか?」


その質問に堂城さんは何故かビクリと肩を震わせた。「…あっ…その、です…ね…」ともごもごと口を何度か動かす。その様子をみんなで見守っていると、堂城さんは溜息を吐いてから話し出した。


「僕は"疑わしきは罰せず"を座右の銘にしてます」

「えっ?」

「ばれてはいけないのですが、少し未来機関の方針が好きではないのです」


苦笑して頬を掻く堂城さんは、年齢よりも幼く見えるように思えた。日向くんたち77期生が21歳前後だから、堂城さんは22歳ほどだろう。顔立ちが少々、童顔だという事もあるのだが。


「だから…確信がないのにあなたが"絶望の残党"だと決めつけられ、処分されるなど許せないのです」


まっすぐに私を捉える双眼。彼はもしかしたら"超高校級の弁護人"にでもなれたのかもしれない。


「それじゃあ、堂城さんは今のところ…"仲間"ってことでいいんですかね」

「…その言葉がふさわしいのかは分かりませんが、僕は人を罰するのが嫌いです。その分には"仲間"ではなく、"同志"と表した方がいいのでしょうね」

「…私からも1ついいかしら」

「なっ、なんでしょう…霧切さん…」


腕を組み、堂城さんを睨み付けるように眺める響子さん。そんな響子さんに怯える堂城さん。


「あなたはなまえさんに危害を与えない…それは絶対ね?」


疑問文なのに答えは決まっている。そう言いたげな声音だった。そんな気迫に押されたのか、堂城さんは声が出ないようで何度も首を縦に振った。


「…そう…」

「じゃあ心配はいらないね」


安心したように苗木くんは声を上げる。さきほどまでは黙りだったのに。


「ボクにとってもなまえさんに危害が加わるか、っていうのは1番だったから。ありがとう、霧切さん。聞いてくれて」

「どうってことないわ。利害が一致しただけだもの」


ツイと視線をそらす響子さんの耳が赤かったのは、心の中にしまっておくとする。照れてるのだ。
日向くんはじっと堂城さんの方を見ていて、私が日向くんに目を向けると彼は疲れたように「大丈夫だ」と笑った。"絶望の残党"について、考え込んでいたのかもしれない。


「…じゃあ、僕はおいとましますね」


すっと立ち上がると同時に、苗木くんの「あっ、待って」と制止を促す声が上がった。


「なんです?」

「えっと、ありがとう。堂城クン」


ふわりと花が綻ぶように笑う苗木くん。その笑みに私は向けられていない、と分かっていてもきゅんとしてしまう。


「…僕はなにもしてません」

「ううん。本部に内緒で伝えに来てくれたんでしょ?その分、プログラムの修正を急ぐ事が出来る。十分だよ」

「そうだといいのですが…」

「それと…キミが良ければ、だけど…」


今度は苗木くんが困ったように微笑む番だった。彼の表情はころころと変わるが、ひとつひとつが魅力的で、毎度毎度心臓がうるさくなってしまう。
世間の言う"好き"とは全く違うと思う。その"好き"はキャラへの"好き"だからだ。この世界は現実だ、と分かっているがどうしても"キャラ"としての位置づけになってしまう。彼らに失礼だろうな、と分かっているのだが…。


「…一緒にジャバウォック島に来てくれたら、いいなぁって」


その人の良い可愛らしい微笑みにはYesとしか言えないのだ。「お、願いします…」そう頷く堂城さんを見た苗木くんは「うん、よろしくね」とまた笑うのだった。

back




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -