朝はフラグ。それはもう分かっているのだが、狛枝くんは懲りずに寝にきた。朝起きると、狛枝くんの綺麗な顔が目の前にまで近付いている、という事が週に4、5回の多さである。
さすがに毎日来ると、蜜柑ちゃんが分かってしまうらしい。今でも分かっていると思うが。


「…おはよう、狛枝くん…」

「おはよう、みょうじさん」


その多さで慣れてしまった私は、驚くことはなくなり、今では普通に挨拶を交わすほどである。日向くんと苗木くんは毎日、朝と夜に挨拶に来てくれるのだが、彼らも狛枝くんについては諦めているようだった。


「じゃあ、またね。みょうじさん」

「ん」


今ではこれだけの言葉の交わしで分かるようになってしまった。嬉しいような嬉しくないような、微妙な感覚だ。狛枝くんも面倒くさい、と分かっているのか苗木くんたちが来る前に帰って行くのだった。
んんっ、と伸びをしていると、「おはよう、なまえさん」「おはよう、みょうじ」という2人の声と共にドアが開いた。


「おはよう。苗木くん、日向くん」


いつも通りパーカーの苗木くんと、珍しくジャージの日向くんである。パーカーはドクロと希望ヶ峰学園のエンブレムがアレンジされたものがプリントされている。苗木くんは緑のかかった黒、私はクリームに近い白色だ。いわゆるお揃い、というものである。
ジャージは希望ヶ峰学園のエンブレムが胸元にワンポイントでプリントされている。
どんだけ希望ヶ峰学園が好きなんだ、と思うが、未来機関は希望ヶ峰学園のOBで結成されたものらしいから、それは当たり前と言えば、当たり前なのかもしれない。


「狛枝クンはまた?」

「あー、うん。もう帰ったよ」

「そっか」


ただそれだけの会話。それだけで狛枝くんへの1日の態度が変わってくる。つまり私の返答で変わるのだ。


「今日は予定ないよね、なまえさんって」


私のようなトリップしてきた人には、必ず付いてくる補正がある。
それが、一級フラグ建築士の資格。それだ。

「毎日ないっす」と答えると、「そうだった」と笑われてしまった。地味に傷付く。


「じゃあ、すぐ準備してほしいな」

「何を?」


私が問えば、新しくフラグが建つ。それが一級フラグ建築士。
苗木くんはクスリ、と微笑んでから胸元をトントンと指で叩いた。


「物資支給に行くんだ。だから、着替えてほしいな」

「今回は苗木、霧切、みょうじ、俺が行くんだ。外の世界に馴染むのは俺たちだろうから、って選ばれた」

「へぇ」


頷きながら、服を取り出す。ある程度恥ずかしくなく、希望ヶ峰学園のエンブレムが描かれていないものを引っ張り出す。絶望の残党が残っていれば危ないから、と言われた。
私が「着替えるから、出て行ってほしいです」と言うと、2人は「俺たちも着替えるから」と言って出て行ってくれた。


「ショッピングか…楽しみすぎる…!!」


鼻歌を歌い出しそうな勢い。私はバッと服を脱ぎ捨て、下着姿になり、服に手を伸ばした。


…ーーガチャッ


「え?」と音の方を見ると、そこにはポカーンとしている狛枝くんの姿が。彼も「え?」と固まっている。
はっと我に返った私は、狛枝くんをキッと睨み付け、


「狛枝くん、ドア閉めて」


とだけ言い放った。強いて言うなら、一緒に寝ている人に下着姿を見られても、恥ずかしさはほとんどないのである。
このテンプレのようなシチュエーション。そのフラグを建て、回収するのが私。一級フラグ建築士だ。

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