ビーチに行くと、男子たちはもうすでに集まっていた。女子が来るまで遊ばない、という連帯感は見習いたいものだ。それより、下心まるだしである。


「みょうじっ、」
「なまえさんっ!!」

「やっほー。苗木くん、日向くん」


手を振る2人に振り返す。苗木くんはいつものパーカーのスカルがプリントされた、半ズボンタイプの水着だ。半袖のパーカーを羽織っている。そのパーカーと水着はセットっぽい、と直感的に思った。
日向くんはネクタイの模様がプリントされた紺色をベースにした半ズボンタイプの水着だ。赤いラインと模様がハイセンスだ。良い感じについた筋肉が眩しい。


「あれ、水着は?」


楽しみにしてくれていたのか、苗木くんの声が落胆しているように聞こえる。日向くんも同じのようだ。1番分かりやすいのは、アンテナがしゅんと落ち込んでいる。


「着てるよ。期待しないでね?」

「そう言われると期待したいな」

「期待はするからな」


いたずらっぽく笑う苗木くんと日向くん。眩しい。渇き切った私には辛いほどだよ。
日向くんは上にはなにも着ていない。だからこそ守られたいと言いたいほどの、良い感じについた筋肉が眩しい。眩しいのだ。(大事な事なので2回言いました。)彼には守ってほしい、と冗談半分本気半分で言える自信がある。いや、冗談三割本気七割でも言える。
苗木くんはパーカーを羽織ってはいるが、前を開けているので肌が見えてしまう。苗木くんに筋肉がついているなんて嘘だッ!!と叫びたい。彼に少しではあるものの、良い感じに筋肉がついている。あのヘロヘロ苗木くんにだ。


「…苗木くんには全く筋肉はない、と思ってた」

「失礼だなぁ…まぁ、否定はしないけど…」

「苗木は逆に守られる立場の方が似合うな」

「…日向クン…?」



「ゴメン」と日向くんが慌てる。だが、日向くんは合っている。苗木くんはヒロインポジだ。公式的にも。苗木くんがヒロイン、霧切さんがナイト。そんなイメージがある。


「30分はかかるんだね。やっぱり女の子だ、なまえさんも」

「あ、いや。私じゃなくて、他の女子たちが競ってたんだよ」

「…え?」

「私の水着はどれが似合うか、とか」


そう伝えると、2人は「あ、やっぱり」と口を揃えた。「なにがやっぱりなの?」と聞くと、日向くんが苦笑気味に答えた。


「みょうじは俺たちの中では最年少なわけだろ?」

「そうだね。私、18だから」

「皆、みょうじが可愛くて仕方ないんだと思うぞ。俺たちの18歳なんて、絶望まっしぐらだったからな」


母性本能のようなモノが、私によってくすぐられた。自分よりいい人生を送って欲しい、という気持ちが行動によって表れたのだろう、と日向くんは言った。嬉しい、と素直に思った。
頬が自然に緩んでいたのか、苗木くんが「なまえさん、嬉しそうだね」と笑った。日向くんも微笑ましそうに笑っている。私はんーっと伸びをして、頬をぱちんと叩いた。よし。


「じゃあ泳ごうっ」


私の言葉に「そうだな」「そうだね」と返してくれた。パーカーをぽいと脱ぎ、脱兎のごとく速さで海に飛び込んだ。ジャバウォック島はずっと常夏なわけだが、海は気持ちいいくらいの温度だった。すっと体温が下がり、ぶるっと体を震わせる。苗木くんと日向くんも遅れて泳いできた。

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