私は今、固まっております。
現在の状況を説明すると、朝を知らせる放送で起きた私は、起きるために目を開けた。そこで固まった。理由は、呑気にすうすうと寝息をたてて同じベットで眠る、

狛枝くんだ。

狛枝くんの右腕からは、点滴の管が伸びている。左腕がない。つまりは本物の狛枝くん。
この状況に直面したら、誰でも思うだろう。


「わけがわからないよ…」


某QBの名言を呟いた所で、狛枝くんのまぶたがピクリと動いた。「ん…っ」とたいへんエロい緒方ボイスで起きた狛枝くんは、上半身を起こすと、まだ呆然と固まっている私に向かって、


「おはよう、みょうじさん」

「…おはよう…狛枝くん…」


ここまで普通に挨拶をされると、問いただす気も失せてしまう。そんな気もの沈みに負けるものか、と狛枝くんに「なんでここに?」と聞いてみた。


「ボクの意思だけど?」

「夜這いかッ!!?」

「なわけないでしょ」

「っで、ですよね!!良かった、狛枝くんがそんなにやり手だったら、皆に鍵締めるように言っておく…べき…」


そこで気が付いた。ひとつの違和感。
苗木くんは『苗木くん以外のコテージには"夜時間の他人の立ち入り"を知らせるセンサーがついている』と言った。ではなぜ、彼が立ち入れているのか。私が鍵をしないから、というのも理由のひとつだが。
私の疑問が分かったのか、狛枝くんは綺麗に微笑んだ。不覚にもときめいた。狛枝くんは美人なのだ、と改めて思う。


「ボクは幸運だからね。どうやら、新しいコテージだから、センサーを付け忘れたみたいだよ」

「なら、なぜ私と一緒に寝ようと思ったの。狛枝くんのコテージは完成してるじゃん」


それが問題、と狛枝くんをまっすぐに見つめる。なんか狛枝くんが嫌味を言わないなんて、逆に気持ち悪い。


「キミと寝るのが、心地よかったからかな。1回だけだったけど。ボクの意識的には最悪だけど、心地よかったから、仕方なくだよ。最悪だけどね」


2度も言うな、と既視感を感じながら、彼の場合は"幸運"の一言で済んでしまうのだから仕方ない。


「じゃあもうすぐ不運がくるね、狛枝くん」

「…まぁ、分かる気がするけど」


「え?」と聞き返すと、その意味が分かった。コンコンとノックの音が響いた、と思ったら返事をする間もなく見慣れた人物が2人入ってきた。


「なまえさん、おは…狛枝クン…?」

「こ、狛枝…お前なんでいるんだ…ッ!?」

「やぁ、おはよう。日向クン、苗木クン」


狛枝くんの姿を確認した途端に目を見開く。当たり前の反応だ。狛枝くんがあっさりと挨拶を返してきたので、それが困惑に困惑をよぶ。


「幸運にもセンサーが無かったから、お邪魔させてもらったんだ」


そしてその一言。日向くんの顔がかっと怒りで赤く染まった。「お前ッ…!!」と怒りを含んだ声で狛枝を睨む。それを制止するように苗木くんが落ち着いた様子で「日向クン、落ち着いて。まずは狛枝クンから事情聴取だよ…」と諭した。私の勘違いだったようだ。苗木くんの声は全く落ち着いていなかった。


「やだな、苗木クン。ボクはただ一緒に寝ただけだよ。なにもしてないって!!」


逆効果である。
その後、私が頑張って説明し、本当になにもなかった事を説明した。これにも、ものすごく既視感を感じる。朝はフラグだという事を改めて確認し、慣れてしまわなければいけないな、と勝手に使命感が湧いた。

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