草餅を食べ終わり、十神くんと霧切さんが帰ってきた頃、苗木くんが思い出したように無線機を取り出した。そして一言。


「ホテルロビーに集まってください。レクリエーションをはじめます」


気が付けば、あたりは真っ赤に染まっていた。プールも赤く輝いている。
すぐそこにあるホテルロビーに向かうと、数人が集まっていた。そこにはなぜか狛枝くんの姿があった。


「なんで狛枝クンが!?」


苗木くんのその質問に、隣にいた蜜柑ちゃんが代わりに答えてくれた。狛枝くんは苗木くんの前なのに、不機嫌そうにツンとしている。


「狛枝さんの容態が落ち着いてきてぇ…狛枝さんが気分転換をしたい、と言ったので、レクリエーションならぁ、と思ったんですけど…すみませぇぇぇんっっっ!!!」

「あ、謝らないでよ。罪木さんっ」

「ほ、ホントにすみませんんんっ!!」


言葉のキャッチボールができていない。私が苦笑して狛枝くんの方を向くと、ちょうど狛枝くんと目が合った。すぐに逸らされてしまったが。

ほとんどのメンバーが集まると、ソファーに座ることになっている。テーブルを挟んで3人がけのソファーが2つ向かい合わせ。立っている人もいるが、それは稀だ。
発表する人は階段近くがセンターなので、そこに行って発表する。十神くん、霧切さんは大体はカウンターの高いイスに綺麗に座るのだが、それが様になって仕方がない。
苗木くんに「苗木くんはカウンターじゃないの?」と聞くと、遠い目をして「いや、届かないんだよね…」と言われてしまったので、慌てて「ごめん」と謝った。160cmだったから、私も届かない。

今回は私を中心に右隣が日向くん、左隣が苗木くんが座った。狛枝くんは点滴が邪魔なのか、カウンターの方のイスに座っている。様になる長身イケメン、ちくしょう羨ましい。


「じゃあ発表してくれるかな?」


その言葉でトップバッターの日向くんが席を立った。私と一緒にいた、私に昼食を作ってもらった、私が作った草餅が美味しかった…エトセトラ。第三者の目で見て、耳で聞くと、日向くんと私はずっと一緒だという方程式が成り立ってしまうのだ。そうとう一緒にいたんだな、と改めて思った。


…ーー私の番に回ってくると、左右田くんが


「お前は日向と同じだろ?」


と悪気なく言ってくれた。「はいそうです」と頷いたが、左右田は少々子供っぽい所がある気がする。ソニアに嫌われるぞ。


「左右田くんの言うとおり、日向くんと同じです。いつも通りでしょ」


そう言うと、ソニアが「微笑ましいですね」、澪田ちゃんが「ラブラブっすねっ!!」、小泉ちゃんが「日向、ちゃんとなまえちゃんを幸せにしなさいよ」などと囃し立てた。私が慌てて弁解する前に、日向くんが弁解してくれた。真っ赤になって。


「そっ、それは違うぞッ!!そうなるのは本望だけど…ッと、とりあえず、俺が好きでいるだけだから、みょうじの気持ちは分からないし…って違うッ!!」


だいぶ混乱しているようだ。日向くんの真っ赤になりながらも必死に弁解する姿を見て、男子勢は「日向…」「素直になれよ」と主に左右田くんが囃し立てた。


「別に居心地がいいってだけですよ。日向くんが隣にいること、が私のデフォルトになってきてるじゃないですか」


そう言い放ってやると、まだ慌てていた日向くんは「…え、みょうじ、それって…」と真っ赤になって固まった。なにも真っ赤になるような事は言っていない、と思うのだが。
なに赤くなってるんだ、と言おうとすると少し不機嫌そうな苗木くんの声が遮った。


「ハイ、なまえさんの番おわり。次は狛枝クンだね。ーあ、そのままでいいよ。負傷者だからね」


苗木くんが狛枝くんを支えながら言うと、狛枝くんは不機嫌オーラを出しながらボソボソと語った。


「…ボクは苗木くんに会いに行ったら、苗木クンにみょうじさんと3日間、接触禁止って言われたよ。それからはずっと病室だよ。でも、この罰も意味ないよね、苗木クン?」


挑発するように言うと、苗木くんは困ったように「そうだね…」と考え込んだ。アナグラムが今、発動されているんだろうか。


「じゃあ、もう罰は今日で終わりでいいよ。条件としては、狛枝くんはレクリエーション等しか病室から出てはいけません。これでいいかな」

「うん、構わないよ。いつも通りだからね」


もうすでに罰でもなんでもないな、と苦笑する。私が事の中心だなんて、考えてもいなかったのだが。
狛枝くんを座らせると、苗木くんが今日の解散を伝えた。狛枝くんに関してのほとんどの世話は、十神くんに任せているらしい苗木くんは「じゃあコテージに戻ろうか」と爽やかな笑顔で言った。
後ろから十神くんの殺気に似たオーラが刺さってきた。

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