「…あれ、なんかおかしくない?」


自分のコテージに着いた私の第一声がこれだ。何がおかしいのか、と問われれば私は即答する。

規模が違う。


「え、おかしいかな?」

「おかしいだろ、俺たちのコテージの2倍はしてるぞ!!?」


そう。皆のコテージの2倍はするほど広い。さすがに同じ一階建てだが、広さが違う。
ちなみに各コテージの住民はこんな感じだ。

ホテルを上にして、道を挟んで左側は主に男子だ。


[田中]_[豚神]_[狛枝]_[日向]

[花村]_[弐大]_[九頭竜]_[左右田]


道を挟んで右側は主に女子だ。苗木くんはもう女子でもいいと思う。


[みょうじ]_[苗木]_[辺古山]_[澪田]

[罪木]_[終里]_[ソニア]_[小泉]_[西園寺]


と、なっている。
ゲームと少し変わっているのは、起きた順も関係あるからだとか。狛枝くんは危険だ、という事で豚神くんと日向くんの間に挟まる結果となったらしい。


「…狛枝くんはやっぱり危険なの?」

「んー…そういう意味での危険じゃないんだよね。まぁ危険という事には変わりないけど」


どういう意味だよ。あれか、性的な意味か。いやいや、狛枝くんに限ってそんなことはない。「狛枝くんだよ?ないない」と笑うと、苗木くんは真剣な顔つきで「狛枝くんも21歳だよ」と。
そういえば、この人たちはもう成人しているのか。苗木くんを見ていると同級生に思える。苗木くん達が未来機関のスーツは暑いと言って着ていないからだろうか。
苗木くんは歳に似合わず、半袖パーカーに七部丈のジャージを着ている。それも理由のひとつだと思う。むしろ中学生に見えてもおかしくない。


「なまえさん、今失礼なこと考えてなかった…?」

「いえ、まさか」


なぜ分かった。こいつまさか本物のエスパーじゃないだろうな。そんな気持ちを振り払うと、私は震える手でコテージのドアを開けた。
中に入ると、まず目に入ってきたのは大きな窓、というかガラス張りのドア。プールを挟んでホテルがそこから見える。ここから出ればプールにすぐ入れるだろう。それを考えてくれたのかは分からないが。


「1LDKだからね。普通に住めるんだ」

「そんなにいらなかったのに」

「本部の経費で落ちるからいいんだよ」


なんだかんだで苗木くん、本部のことなめておりませんか。
1LDKでも充分なのだが、さらに上乗せでお風呂はジャグジーときた。テレビもソファーも天蓋付きベッドも備え付けてあり、おそらく高級品だ。
全体的に白でまとめられた内装。清潔感と高級感に溢れている。住むのがもったいないぐらいだ。


「本部に感謝くらい言ってあげてね、苗木くん」

「んー、なまえさんが言うなら…」

「あら可愛い。やっぱ違和感仕事しろ」

「なまえさん、」


慌てて「すみません」と謝る。日向くんは狛枝くんのコテージを覗きに行ったのだが、狛枝くんのコテージは他の人とは変わらなかったらしい。つまりは私のコテージだけが、飛び抜けておかしいのである。


「そうだ。なまえさんってご飯作れる?」


ふと思い出したかのようだった。苗木くんの質問に「人並みに」と答える。上手くはないし下手でもない。料理は普通中の普通なのだ。


「じゃあ昼食作って欲しいな」


こてんと可愛らしく頼まれれば、断れないのが私の弱みである。「…期待しないでね」と言うと、日向くんもお腹がすいたようで「俺も頼む」と言ってきた。
私は食堂じゃないんだぞ。と思いながら言いなりになってしまうのだった。

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