霧切さんが言ったとおり、すぐにレクリエーションは始まった。
ロビーに集まった人たちはピンクのトランクを見て、「うわぁ…」と声を揃えた。ソファーに全員が座ると、霧切さんがパン、と手を叩いた。


「レクリエーションを始めます。自己紹介しなくてもいいわね?
…じゃあ、まずはお楽しみの争奪戦ね」


争奪戦、と霧切さんが言うと皆の瞳が獣のごとくギラついた。それほど楽しみだったのか、と苦笑いを浮かべてしまう。
隣に座った日向くんの顔を見ると、日向くんも「ハハ…」と乾いた笑い。日向くんでさえ適応できていないようだ。


「まずはお楽しみのピンクのトランク」


その一言に皆は「あっ…」とトランクから目を逸らした。私と日向くん、狛枝くん、ソニアさん、豚神くんだけがトランクを見ている。


「今回は普通の国数英社理の5教科よ。テキストは各教科、5冊ずつ。欲しい人はいる?」

「じゃあ、ハイ。セットでください」


私が手を上げると、勇者だぜとでも言うような視線を感じた。私の挙手にトランクを見つめていた他の4人も手を上げた。


「俺も」
「ボクもいいかな」
「わたくしもお願いします」
「俺もだ」


その挙手に、霧切さんは「ちょうど5人ね。良かったわ、取りにきて」と言い、5冊セットで各々に渡してくれた。勉強嫌いな他のメンツは「嘘だろ…勉強好きとか…ありえねぇ」などと言っているが、私は勉強嫌いだ。それはそれは呆れるほどに。
だが教えるのは、かの有名な十神くんだ。予習でもしておかなければ、なにか言われるに決まっている。してもなにか言われるに決まっている。
チラ、と十神くんの方を盗み見ると、十神くんはいい心がけだ、と言うようにニヤリと口角を上げた。


「余らなくて良かったわ。じゃあ次はこの黒色のトランクね」


枕が2つ、可愛らしい柄のカーテンとシンプルなワンカラーのカーテン、モノクロのカーテンなどが広げられる。他には鏡などの小物が置かれた。


「じゃあ枕から。枕カバーもあるわ。必要な人は?」

「はーい。その水色の枕カバーと枕が欲しいです」
「じゃあ、貰えるかな。枕と若草色の枕カバー、セットで」


狛枝くんと声が重なったが、狛枝くんも私も特に気にしなかった。霧切さんに枕と枕カバーを受け取ると、日向くんの隣に戻った。そして狛枝くんは私の日向くんとは逆の隣に座る。
次々と争奪戦が行われ、私の今までの戦利品は、5教科のテキストに枕と枕カバー、白色に水色で刺繍をされたある程度高級そうなカーテン、シンプルな手鏡、シャンプーなどだ。
他の人は前回の争奪戦の戦利品で間に合っているのか、私と狛枝くんほど多くの物が手元にはない。


「次はお楽しみのこの緑のトランクね」


わあっ、とその場が湧いた。緑のトランクは服などが入っている。霧切さんは一度広げて見せ、また畳みと繰り返した。その間、皆の瞳が獣のごとくギラついていた。


「じゃあまずはこのパーカーね」


半袖のパーカーが2着広げられる。男性用と女性用が1着ずつあり、私が一目惚れした服だ。
パステルカラーでまとめられ、希望ヶ峰学園のエンブレムが大きく描かれている。それがセンス良く見えるから希望ヶ峰学園のエンブレムすごい。


「はい」
「ん」


狛枝くんと私の手が同時に挙がった。取っ組み合いをする気はないので、隣の狛枝くんと一瞥して服を取りに行く。私が受け取ったのは水色がベースで、狛枝くんが受け取ったのは薄めのミントグリーンをベースにしたものだった。
それからというもの、狛枝くんと私は図ったかのように同じ服を受け取った。7割がお揃いと言ってもいいほどだ。Yシャツなどは被らなかったが、パーカーは被った。
7割がお揃い、と言っても色は同じではない。大体は狛枝くんが緑系統や無彩色、時々暖色。私が青系統と無彩色、茶色系統だった。


「趣味が一緒なんじゃない?あなたたち2人」


霧切さんに呆れるように言われてしまった。狛枝くんを見ると、さほど嫌そうな顔をしてなかったので良かった。むしろ嬉しそうに見えたが、気のせいだろう。


「そうかもしれませんね」

「は?みょうじさん、なに言ってんの」

「喧嘩しないで。喧嘩するならコテージでやりなさい」


怒られたじゃないか。狛枝くんを睨みつけると、そっぽを向かれてしまった。さっきまでの表情はどうした。ムカつく。

争奪戦もといレクリエーションが終了し、解散。私は狛枝くんに「先にコテージ行っといて」と告げ、霧切さんたちの元へ走った。

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