ホテルのロビーに10個のトランクを運び込むと、十神くんはソファーに座り、綺麗に足を組んだ。ここまで綺麗な足を組む仕草を見たことがなかった。さすがイケメン。様になる。


「このトランクの中には何が入ってるんですか?」


単純にそう聞くと霧切さんは「開けてみれば分かるわ。ただし赤色のトランクには気を付けて」とトランクを開けることを促した。
その言葉を聞いた私は、1番近くにあった緑色のトランクを開けることにした。緑色のトランクは2つもある。日向くんも狛枝くんも私が開けるのを待っているようで、キラキラと子供のように目を輝かしている。


「…服とか下着だ!」


そう言って中に入っていた服を取り出し、広げては畳みを繰り返した。日向くんは自分の気に入った服を見つけると貰う候補に入れているようで、狛枝くんは「これいいねぇ」とうっとりとしていた。
サイズは多くあり、同じ服も何着かあったのでサイズがあわない、というのはなさそうだと思った。


「レクリエーションで欲しいものの争奪戦をするのよ。趣味がピッタリ合う、ってことは少ないから大体は手にはいるわ。今のうちに品定めをしておきなさい」


霧切さんが説明してくれると、狛枝くんも理解したようで私が畳んでおいた服を、なんどか調べていた。やはりパーカーなのか、狛枝くん。
私も気に入った服があった。欲しい人がいませんように、と願うが欲しい人がいれば譲ってあげよう。ここの人たちは諦めが悪そうだから。

緑色のトランクを全部開けると、次は黒色のトランクを開けることにした。
中にはタオルや石鹸、シャンプーなどの日常品が詰まっていた。どれも庶民的なものではなく、ホテルなどに置いてあるような少し高めの物のようだった。


「これも争奪戦するんですか?」

「えぇ。各コテージに設置してあるシャワールームやバスルームに置く事ができるの。あなた達はまだ必要ないけど、今のうちに貰っておく方がいいわ」


どうやらシャワールームかバスルームか選択できるようだ。大体の人はバスルームを選択するとか。さすが風呂好き日本人。

次に白色のトランクを開けようとすると、十神くんに「それはお前には関係ない」と言われてしまった。日向くん曰く、欲しいものを頼むと個別で買ってきてくれると言う。それがこのトランクに入っているらしい。

じゃあ違うのを開けるか、と薄めのオレンジ色をしたトランク2つを開けた。
中にはシーツや枕などの寝具にカーテンなどだった。部屋を飾るための物が多い。それも個別で買う人の方が多いが、特にこだわりがない人はこれに頼っているとの事。
霧切さん曰く、この枕などは私たち用に買ってくれたと言う。シーツは全員で使うらしい。


「どうせ昨日は苗木くんの枕1つで一緒に寝たんでしょう?」


「苗木くんはそこらの配慮がないから」と飽きれたように霧切さんが溜息を吐いた。
それが図星だからなにも言い返せない。

次にピンク色のトランクを2つ。
本や教科書などがギュウギュウに詰め込まれていた。確か私が運んだのはこれだった。だから重かったのか、と違うのを持って行けば良かったと後悔した。


「これは?」

「週に2回ほど勉強をする日としている。学校が週に2回ある、と考えた方が早いな。こいつらは絶望に溺れてロクに勉強をしていなかっただろうからな」

「あぁ、そういうことですか」

「…何を思っているかは知らないが、俺たちもお前のことを聞いている。この前まで高校生だったんだろう?なら、お前も参加に決まっているだろう」


「やっぱり…」と肩を竦めると、日向くんがポンと何も言わずに肩を叩いた。ドンマイ、ってことか。そこまで難しいのか…、と思っていると十神くんはニヤリと笑った。


「俺が教える」

「あ"ー…」

「不満か?むしろ俺に教えてもらうのだと光栄に思え」

「どうせあれですよね。何ヶ国かの言語を覚えろ、とかですよね」


自分の考えをぶっちゃけると、十神くんは当たり前だろうとでも言うかのように鼻で笑った。やっぱりか、と溜息を無意識に吐いてしまう。

次に水色のトランクを開けた。
新しい掃除用具などが詰められており、日向くんは嬉しそうに声を上げた。掃除好きの主夫か。

そして最後に気を付けろと言われた赤色のトランクを開けた。


「わぁ、美味しそうっ」


詰められていたのは新鮮な野菜やお肉、調味料やお菓子など。やはりこれも少し高めのものが多くだった。
後で厨房に運び入れとけと言われてしまった。

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