波の音に起こされた私は、そこまでかと言いたいほど気持ち良く目覚めた。…のだが目の前にある端整な顔立ちのせいで、もう一度目を閉じようかと思った。
睫毛長い…と不覚にもその端整な顔立ちに見惚れていると、「んんっ…」と言うエロい声が彼から漏れた。
黙って人のいい性格になれば、普通にモテるし惚れるのだが、ムカつくのだから仕方ない。
と言うより、なぜ私たちは向かい合って寝ているのか。それは単純にお互いの寝相がそうなったのだが。
私はこのまま狛枝くんが起きたら、また嫌味を言われるな、と悟りゆっくりとベットから出ようと体を起こした。
「失礼しますねー…」
狛枝くんを起こさないように、と音を出さないようにベットから降りようと足を伸ばした。
…ーーその時だった。
「はっ!?」
ガッとベットに戻されたかと思うと、両腕が顔の横で腕が腕によって固定されていた。
そして天井があるはずの上には、ジト目でこちらを見下ろす狛枝くんの顔。組み敷いているようだと理解した。
「…ねぇ、」
「…はい…?」
コイツ、寝ぼけてやがる。
そう思ってこの状況を自己完結をしたが、トリップしての男と寝る、なんてこんなフラグが立たないわけがなかったのだ。
朝はフラグの巣窟だ。危険だ。けれど、今の状況に自分の貞操が奪われる、なんて危機感は不思議と感じなかった。
「…みょうじさん、ってさぁ…自分の身の危険のこと、予想できないの…?」
「まさか。狛枝くんは答えたじゃないですか」
襲うのか、と聞けば"ない"と即答で答えたじゃないか。
そう嘲笑ってやると、狛枝くんは眠そうな顔で「ふーん…」と呟いた。
「私は狛枝くんの事を信じてるんですよー」
棒読みで言うと、狛枝くんは「それ棒読み」と苦笑した。
そういう顔は綺麗なんですけどねぇ…、と溜息を吐く。心の中で言ったはずだったのだが、口に出ていたようで狛枝くんは驚愕したように目を見開いていた。
「…なんですか。その間抜け面」
「みょうじさんには言われたくないなぁ」
「何度でも言ってあげますよ?」
「嫌だね」
普通に会話しているのが不思議だ。しかもこの体制で。
この体制から全く動かない。そんな体制のまま時間がすぎていると、コンコンとノックが響いた。それから返事する間も、狛枝くんが退く間もなくガチャ、とドアが開いてしまった。
「おはよう。みょうじ、大丈夫だっ…………狛枝ァ…」
このシチュエーションもフラグである。
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